パソコンやスマートフォンを見続けた夕方、目の奥がずっしり重く、思わず目頭やまぶたをぐいぐい押してしまう——そんな「目の凝り」を感じている方は少なくありません。ただ、いちばん押したくなる「眼球そのもの」が、最も押してはいけない場所だということは、あまり知られていません。本記事では、目が凝る感覚の正体を整理したうえで、眼球を直接押すことで心配されるリスクと、骨の縁を使った安全なほぐし方の原則を、公的機関や学会の情報をもとにまとめました。
- 「目の凝り」は眼球が凝っているのではない:眼輪筋・外眼筋・毛様体筋と、眼窩まわりや首肩の筋肉の張りが重なった感覚と考えられています
- 眼球を直接押すのは避けたい:日本眼科学会は、目を掻くことで円錐角膜が進行すると考えられていること、外傷が網膜剥離のリスク因子であることを示しています
- 押すなら「骨の縁」が原則:眼球が収まる眼窩(がんか)という骨のくぼみのフチをたどり、指が眼球に触れない位置で圧をかけます
- 攅竹・晴明・太陽・風池はいずれも骨や筋肉の上にある:東洋医学で目のツボとして知られる位置は、眼球ではなく骨のくぼみや首の筋肉の外側にあります
- やってはいけない場面と受診の目安を先に知る:結膜炎・ものもらい・コンタクト装用中・目の手術後・強い痛みがあるときは触らず、急な視力低下や視野欠損、吐き気を伴う頭痛があれば速やかに受診を
「目の凝り」とは?まず正体を知る(眼球ではなく“まわり”の疲労)


「肩が凝る」と同じ感覚で「目が凝る」と表現する方は多いのですが、医学の教科書に「目の凝り」という病名があるわけではありません。近いものとして日本眼科学会は眼精疲労を、「視作業を続けることにより、眼痛・眼のかすみ・まぶしさ・充血などの目の症状や、頭痛・肩こり・吐き気などの全身症状が出現し、休息や睡眠をとっても十分に回復しえないもの」と説明しています(出典:日本眼科学会「眼精疲労」)。つまり、目の重だるさは目だけの話にとどまらず、頭や肩の症状ともつながって語られる状態だということです。
①まぶたを閉じる「眼輪筋」の張り
眼輪筋(がんりんきん)は、目のまわりをドーナツのように取り囲み、まばたきや目を閉じる動きを担う表情筋です。画面を凝視するとまばたきが減りやすく、逆に眩しさや乾きを感じると無意識に目を細める動きが増えます。この「使いすぎ」と「固まったまま動かさない」が重なることで、まぶたのまわりに張った感じが生じると考えられています。眉や目頭のあたりを押したくなるのは、この眼輪筋とその下の骨のフチに手が伸びているためです。
②眼球を動かす「外眼筋」の疲れ
眼球には、視線を上下左右や斜めに向けるための筋肉(外眼筋)が左右それぞれ6本ずつ付いています。近くの画面を長時間見るときは両目を内側に寄せた状態が続き、この筋肉が同じ姿勢で緊張し続けます。首を同じ角度で固定し続けると凝りを感じるのと似た構造で、「動かさないまま緊張が続く」ことが重だるさの背景にあると説明されます。ただし外眼筋は眼球の外側から後方に付いているため、外から指で直接ほぐせる場所にはありません。
③ピント調節を担う「毛様体筋」は眼球の内側にある
近くを見るときにレンズ(水晶体)の厚みを変えてピントを合わせているのが、眼球内部にある毛様体筋です。手元の作業が続けば、この筋肉は縮んだ状態を保ち続けます。ここで重要なのは、毛様体筋は眼球の“中”にあるため、外から指で押しても直接届かないという点です。「奥が凝っている感じがするから強く押したい」という発想は、解剖学的には的を外しています。
④眼窩まわりと首・肩は構造としてつながっている
眼球は「眼窩(がんか)」という頭蓋骨のくぼみに収まっており、その縁は眉の下・目頭・こめかみ・頬骨の上に、指で触れられる硬い骨として存在します。さらに画面を見るときの前かがみ姿勢は、後頭部から首の後ろの筋肉に持続的な負担をかけます。日本眼科学会の眼精疲労の説明にも「頭痛・肩こり」が全身症状として並ぶとおり、目のだるさと首肩の張りは切り離して考えにくいものです。
※本記事は目のまわりの構造とセルフケアの考え方を整理したもので、特定の症状の診断・治療・予防を目的としたものではありません。感じ方には個人差があります。
なぜ眼球を直接押してはいけないのか【心配される5つのリスク】


まぶたの上から眼球をぐっと押すと、一瞬すっきりしたように感じることがあります。しかし、その場の感覚と安全性は別の話です。公的機関・学会が示している情報をもとに、心配されるポイントを整理します。
①角膜への負担(円錐角膜との関連が指摘されている)
円錐角膜は、角膜が徐々に薄くなって前方にとがっていく病気です。日本眼科学会の解説では、発症しやすい体質にアレルギー性結膜炎などで目をよく掻く要素が加わることで進行しやすくなるとされ、「目を掻くことで円錐角膜が進行すると考えられています」と明記されています(出典:日本眼科学会「円錐角膜」)。かゆくてこするのも疲れて押すのも、角膜に外から力を加える点では同じ刺激です。
②網膜へのリスク(外傷はリスク因子とされる)
眼球の内側を覆う網膜がはがれる網膜剥離について、日本眼科学会は強度近視や家族歴とともに外傷をリスク因子として挙げています(出典:日本眼科学会「網膜剥離」)。日常的な軽い指圧が直ちに網膜剥離につながるという意味ではありませんが、眼球に外から力を加える行為は、あえて増やす必要のない刺激だといえます。
③眼球の内部は一定の圧力で保たれている
眼球の中は房水という液体で満たされ、一定の内圧(眼圧)が保たれることで球体の形と機能が維持されています。日本眼科学会は、眼圧は通常10mmHgから20mmHgが正常範囲内と考えられていると説明しています(出典:日本眼科学会「緑内障」)。外から指で押すことは、この繊細に保たれた環境にわざわざ外力を加えることになります。緑内障で経過観察・治療を受けている方は、自己流の圧迫は避け、かかりつけの眼科医に相談してください。
④コンタクトレンズ装用中は特に避けたい
コンタクトレンズは高度管理医療機器に分類され、誤った使い方で眼障害が起こり得ることが公的に注意喚起されています。消費者庁は「目の充血や異物感、痛み、まぶしさ、かゆみなどの異常を感じたら、すぐにレンズを目から外し、直ちに眼科医に相談しましょう」と呼びかけています(出典:消費者庁「コンタクトレンズによる眼障害について」)。レンズを入れたまま眼球を押せば、レンズがずれたり、レンズと角膜の間に挟まったものが擦れたりするおそれがあります。目のまわりをケアするなら、まずレンズを外してからが基本です。
⑤手指の清潔さの問題
まぶたの縁が赤く腫れる麦粒腫(ものもらい)について、日本眼科学会は「汚い手で目をこすったりしないように注意が必要です」と述べています(出典:日本眼科学会「麦粒腫」)。キーボードやスマートフォンを触った手でそのまま目元に触れる習慣は、この点でも見直したいところです。ケアの前に手を洗い、爪を短く整えておくことが土台になります。
| 心配されるポイント | どういうことか | 特に気をつけたい人 |
|---|---|---|
| 角膜への刺激 | 目を掻くことで円錐角膜が進行すると考えられている(日本眼科学会) | アレルギー性結膜炎がある人 |
| 網膜へのリスク | 網膜剥離のリスク因子として外傷が挙げられている | 強度近視の人・家族歴のある人 |
| 眼圧という環境 | 眼球内部は一定の圧力(通常10〜20mmHg)で保たれている | 緑内障で通院中の人 |
| レンズのずれ・擦れ | コンタクトレンズは高度管理医療機器。異常時は外して眼科へ | コンタクトレンズ装用者 |
| 手指の汚れ | 汚い手で目をこすらないよう注意が呼びかけられている | 目元をよく触るくせがある人 |
※上表は公的機関・学会が公開している情報を整理したものです。個別の症状や適否については眼科医の判断を優先してください。
正しい押し方の原則は「骨の縁」|目のまわりの代表的なツボ4つ
では、どこを触ればよいのか。原則はシンプルで、指が眼球に沈み込まない場所=骨に当たる場所だけを使うことです。目のまわりを指でなぞると、眉の下・目頭の脇・こめかみ・頬骨の上に硬い骨のフチ(眼窩の縁)を感じられます。指の腹をそのフチに当て、骨に向かって垂直に軽く圧をかける。指先がやわらかい部分に沈んだら、そこは眼球側なのですぐ位置を戻す——これが安全の唯一の基準です。強く押すほど良いという考え方は目のまわりには当てはまりません。目安は「痛気持ちいい」の一歩手前まで。爪を立てない、急に強く押し込まない、痛みが出たらすぐやめる、の3つを守ってください。
東洋医学で知られる4つのツボの位置
目の疲れに関連して東洋医学で古くから挙げられてきたツボに、攅竹(さんちく)・晴明(せいめい)・太陽(たいよう)・風池(ふうち)があります。いずれも位置を確認すると、眼球そのものではなく骨のくぼみや首の筋肉の外側にあることがわかります。感じ方には個人差があるため、ここでは位置と押し方の目安を整理します。
| ツボ名 | 位置の目安 | 押す向き | 押し方の目安 |
|---|---|---|---|
| 攅竹(さんちく) | 眉頭の内側の端にある、骨のくぼみ | やや上(眉の骨の裏側)へ | 親指の腹で5秒×3回 |
| 晴明(せいめい) | 目頭と鼻の付け根の間にあるくぼみ | 鼻の骨に向かってつまむように | 親指と人差し指で5秒×3回 |
| 太陽(たいよう) | 眉尻と目尻の中間から、外側へ指1本分ほどのくぼみ(こめかみ) | 頭の中心へ向けて | 中指の腹で円を描くように |
| 風池(ふうち) | 後頭部の髪の生え際、首の太い筋肉の外側のくぼみ | 頭の中心へ斜め上向きに | 両手で頭を支え親指で5秒×3回 |
※ツボの位置と押し方は東洋医学で一般に紹介されている内容の整理です。押した感じ方には個人差があり、痛みが出る場合はすぐに中止してください。
1分でできる目のまわりのセルフケア【3ステップ】


デスクに座ったまま、1分程度で行える流れを紹介します。始める前に必ず手を洗い、コンタクトレンズは外してください。いずれも眼球には触れず、骨の縁と首の筋肉だけを使います。
手を触れる前に、画面から視線を外して窓の外など数メートル以上先をぼんやり眺めます。厚生労働省のガイドラインでも、作業休止時間は「リラックスして遠くの景色を眺めたり、眼を閉じたり」する時間だと説明されています。ここで一度、近くを見続けていた状態をリセットします。
親指の腹を眉頭の下のくぼみ(攅竹)に当て、骨を感じながら5秒じんわり圧をかけます。そのまま眉の下の骨のフチを内側から外側へ少しずつ位置をずらし、こめかみ(太陽)まで移動。次に目頭と鼻の付け根の間(晴明)を、鼻の骨に向けてつまむように5秒。指がやわらかい部分に沈んだら眼球側なので、すぐ骨の上へ戻します。
両手で頭を包むように持ち、後頭部の髪の生え際にあるくぼみ(風池)を親指で斜め上に5秒押し上げます。最後に肩をすくめてストンと落とす動きを数回。目のだるさと首肩の張りは構造的につながっているため、目元だけで終わらせないのがポイントです。感じ方には個人差があります。
そもそも「凝る前に区切る」ほうが現実的
厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分〜15分の作業休止時間を設け、かつ一連続作業時間内において1回〜2回程度の小休止を設けるよう示されています(小休止は1分〜2分程度)。また、ディスプレイはおおむね40cm以上の視距離を確保し、画面の上端が眼の高さとほぼ同じかやや下になる高さが望ましいとされています。セルフケアより先に、この作業環境の見直しに手をつけるほうが負担そのものを減らせます。
やってはいけないケースと、受診の目安
セルフケアを行わないほうがよい場面
次のような状況では、目のまわりを押す・こする行為は避けてください。いずれも刺激を加えることが状態にとって不利にはたらくおそれがある場面です。
- 結膜炎があるとき:ウイルス性結膜炎は感染力が強いものがあり、触れた手を介して反対の目や周囲へ広げてしまうおそれがあります
- ものもらい(麦粒腫・霰粒腫)ができているとき:赤み・腫れ・痛みがある部位を圧迫しないでください
- コンタクトレンズを装用中:必ず外してから。装用中に異常を感じたらすぐレンズを外して眼科へ
- 目の手術(白内障・網膜・レーシック等)を受けた後:触れてよい時期・範囲は主治医の指示に必ず従ってください
- 強い痛み・急な視力の変化があるとき:セルフケアの対象ではありません。まず受診を
- 目に何かが入った・ぶつけた直後:こすらず、自己判断で洗ったり押したりせず眼科へ
すぐに眼科・医療機関の受診を検討したい症状
「疲れ目」と自己判断してはいけない症状があります。日本眼科学会は、網膜剥離では飛蚊症や光視症のあとに視野の一部が欠ける・急な視力低下が生じること、急性緑内障発作では眼痛・視力低下・嘔気・嘔吐などが生じることを示しています。次のような症状がある場合は、様子見をせず眼科を受診してください。
- 急な視力低下(短時間で見え方が大きく変わった)
- 視野の一部が欠ける・カーテンがかかったように見える
- 黒い点や糸くずが急に増えた(飛蚊症の急な増加)、光が走って見える(光視症)
- 片目だけに起きている症状(片目をふさぐと見え方が明らかに違う)
- 突然ものが二重に見える(複視)
- 激しい眼の痛み、吐き気・嘔吐を伴う頭痛
- 目の充血・強い異物感・まぶしさが続く
とくに吐き気を伴う激しい頭痛や、突然の複視・片側だけの神経症状は、眼だけでなく脳神経の領域に関わる可能性もあります。迷ったら救急外来や脳神経外科を含めた医療機関に相談してください。「マッサージで様子を見る」が最も避けたい対応です。
整体・治療院に相談するという選択肢
目のだるさに首・肩の張りや姿勢のくせが重なっていると感じる場合、整体などの施術所で首肩まわりや姿勢の状態をみてもらう選択肢もあります。施術所で行われるのは、姿勢や身体の使い方の確認と、首肩まわりへの手技によるアプローチが中心です。医療機関の診断・治療に代わるものではなく、目そのものに症状がある場合は眼科の受診が先になります。持病のある方・治療中の方は事前に主治医に相談してください。
よくある質問(FAQ)
- まぶたの上から眼球を押すと一瞬すっきりします。続けても大丈夫ですか?
-
おすすめできません。日本眼科学会は、目を掻くことで円錐角膜が進行すると考えられていること、外傷が網膜剥離のリスク因子であることを示しています。眼球ではなく、眼窩の骨のフチや首のつけ根を使う方法に切り替えてください。
- コンタクトレンズを着けたままツボ押しをしてもいいですか?
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外してから行ってください。コンタクトレンズは高度管理医療機器で、消費者庁も異常を感じたらすぐ外して眼科医に相談するよう呼びかけています。装用中に目元を押すとレンズがずれたり擦れたりするおそれがあります。
- ツボを押せば視力が良くなりますか?
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ツボ押しで視力そのものが変わると言えるものではありません。本記事で紹介しているのは、目のまわりや首の筋肉に負担がかかった状態に対して安全な範囲で行えるセルフケアの手順です。見え方に変化を感じる場合は、まず眼科で確認してもらってください。
- ホットタオルで目を温めるのはどうですか?
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目のまわりを温める習慣は広く行われていますが、感じ方には個人差があります。やけどを避けるため温度は必ず手の甲で確認し、結膜炎やものもらいで赤み・腫れ・痛みがあるときは温めずに眼科を受診してください。目の手術後の方は主治医の指示に従ってください。
- 目のだるさと一緒に肩こり・頭痛もあります。どこに相談すればいいですか?
-
日本眼科学会の眼精疲労の説明でも、頭痛や肩こりは全身症状として挙げられています。まずは眼科で目の状態(度数が合っているか、疾患がないか)を確認するのが順序として安心です。そのうえで姿勢や首肩の張りが気になる場合に、整体などの施術所を検討するとよいでしょう。
まとめ


「目の凝り」という感覚は、眼球そのものが凝っているのではなく、眼輪筋・外眼筋・毛様体筋、そして眼窩まわりから首・肩へと続く筋肉の負担が重なったものと考えられています。だからこそ、いちばん押したくなる眼球が、いちばん押してはいけない場所になります。押すのは骨の縁だけ、指がやわらかい部分に沈んだら位置を戻す——この一点を守るだけで、セルフケアの安全性は大きく変わります。そして、急な視力低下・視野欠損・片目だけの症状・突然の複視・吐き気を伴う頭痛があるときは、セルフケアの対象ではありません。迷わず眼科や医療機関に相談してください。
参考文献・出典
- 日本眼科学会「眼精疲労」
- 日本眼科学会「円錐角膜」
- 日本眼科学会「網膜剥離」
- 日本眼科学会「緑内障」
- 日本眼科学会「麦粒腫」
- 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(PDF)
- 消費者庁「コンタクトレンズによる眼障害について-カラーでも必ず眼科を受診し、異常があればすぐに使用中止を-」
- 国民生活センター「コンタクトレンズによる目のトラブルにご注意ください」
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運営:一般社団法人中小企業集客支援機構 | 最終更新:2026年7月


