パソコンやスマートフォンを見続けた日の夕方、こめかみのあたりがズーンと重い、指で押すと張っている——そんな感覚に心当たりはないでしょうか。目の奥の疲れと同時にこめかみが痛むと、「目の疲れなのか頭痛なのか」と判断に迷うものです。本記事では、こめかみ周辺にある側頭筋の構造と、目の使いすぎ・食いしばりとのつながりを整理したうえで、筋肉由来の張りと頭痛の見分け方の目安、そして速やかに医療機関を受診してほしい症状までをまとめました。自己判断で放置しないための材料として活用してください。
- こめかみには「側頭筋」という噛むための筋肉がある:耳の上から側頭部に扇状に広がる大きな筋肉で、ここが張ると「こめかみが痛い」という感じ方につながることが知られています
- 目の使いすぎと側頭部の張りは無関係ではない:日本眼科学会は眼精疲労の全身症状として頭痛・肩こり・吐き気を挙げています
- 集中時の「食いしばり」が側頭筋の負担を増やす:安静時は上下の歯が触れていないのが自然とされ、噛みしめる癖があると側頭筋・咬筋が働き続けます
- 筋肉の張りと「頭痛」は分けて整理する:緊張型頭痛・片頭痛には学会が示す特徴の違いがありますが、本記事は診断を行うものではありません
- 突然の激しい頭痛・麻痺・視野の異常はためらわず受診:日本頭痛学会は「いつもと違う突然の強い頭痛」「半身の手足の動きが悪い」場合の受診をすすめています
こめかみが痛いとは?側頭部の筋肉と目の関係の基礎知識


こめかみは、目尻と耳の上端を結んだあたりにある頭の側面のくぼみです。皮膚のすぐ下には側頭筋(そくとうきん)が扇のように広がり、その筋線維は下方に集まって下あごの骨(下顎骨の筋突起)に付着しています。つまり側頭筋は、頭の横にありながら「あごを閉じる=噛む」ための筋肉です。奥歯を軽く噛みしめながらこめかみに指を当てると、筋肉が盛り上がって硬くなるのが分かります。ここが張りを感じる場所そのものです。
側頭筋・咬筋・後頭部の筋肉はつながって働いている
噛む動作に関わる筋肉(咀嚼筋)は側頭筋だけではありません。頬のえら付近にある咬筋(こうきん)も代表的な咀嚼筋で、側頭筋と協調して働きます。また後頭部から首の付け根の筋肉は頭の位置を支えており、画面をのぞき込む前傾姿勢が続くと、その緊張が頭の側面にも及んでいると感じる方は少なくありません。こめかみだけが単独で疲れるというより、目・あご・首という一続きの領域に負担が集まっていると捉えると理解しやすくなります。
目の使いすぎが側頭部に影響しやすい理由
近くを見るとき、目のなかでは水晶体の厚みを変える毛様体筋が働き続けます。画面との距離が一定のまま作業が長引くとこの調節が休まらず、目の疲れとして自覚されます。日本眼科学会は眼精疲労を「視作業を続けることにより、眼痛・眼のかすみ・まぶしさ・充血などの目の症状や、頭痛・肩こり・吐き気などの全身症状が出現し、休息や睡眠をとっても十分に回復しえない状態」と説明しています(出典:日本眼科学会「眼精疲労(目の疲れ)」)。頭痛や肩こりが目の疲れの文脈で語られること自体が、目と頭部・頸部の負担の近さを示しています。
画面作業の環境が負担の大きさを左右する
厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までの間に10分〜15分の作業休止時間を設け、一連続作業時間内にも1〜2回程度の小休止を設けることが示されています。あわせて、ディスプレイとの視距離はおおむね40cm以上、書類上やキーボード上の照度は300ルクス以上とすることも記されています(出典:厚生労働省 基発0712第3号)。裏を返せば、これらが守られていない環境では目にも姿勢にも負担がかかりやすくなります。
※本記事は解剖学的な構造と公的機関の情報を整理したもので、症状の診断や治療について述べるものではありません。感じ方には個人差があります。
「筋肉由来の張り」と「頭痛」の見分け方【比較表つき】


こめかみの不快感には、筋肉の張りとして感じられるものと、医学的に「頭痛」に分類されるものがあります。両者は重なることもあり素人判断で線引きはできませんが、学会が公開する特徴を知っておくと医療機関で症状を説明しやすくなります。
緊張型頭痛と片頭痛には特徴の違いがある
日本頭痛学会は緊張型頭痛について、「圧迫されるような、あるいは締めつけられるような非拍動性の頭痛」で多くは両側性、30分から7日続き、悪心や嘔吐はないと説明しています。一方、日本神経学会の解説では片頭痛は「片側の拍動性頭痛が特徴」で、程度は中等度〜高度、発作は4〜72時間続くとされています。脈打つ痛みなのか、締めつけられるような重さなのかは、区別の手がかりの一つになります。
| 項目 | 筋肉由来の張り(こめかみのコリ感) | 緊張型頭痛 | 片頭痛 |
|---|---|---|---|
| 感じ方 | 押すと硬い・こわばる・重だるい | 圧迫される、締めつけられる(非拍動性) | ズキンズキンと脈打つ(拍動性) |
| 部位 | こめかみ・えら・後頭部など | 多くは両側性 | 片側性が特徴とされる |
| 持続 | 作業量や姿勢で日内変動しやすい | 30分〜7日 | 発作が4〜72時間続く |
| 随伴症状 | あごのだるさや肩・首のこわばりを伴うことも | 悪心・嘔吐はない | 日常生活に支障が出ることがある |
| 目安の対応 | 姿勢や作業環境、休憩の取り方を見直す | 続く・繰り返す場合は医療機関へ相談 | 続く・繰り返す場合は医療機関へ相談 |
※表は日本頭痛学会・日本神経学会の一般向け解説をもとにした整理であり、自己診断の基準ではありません。頭痛の種類の判断は医師が行うものです。
食いしばり・歯ぎしりのセルフチェック
本来、口を閉じて安静にしているとき、上下の歯はわずかに離れているのが自然な状態だとされています。ところが集中作業中や緊張時には、無意識に歯を接触させ続けたり噛みしめたりする癖が出ることがあります。次の項目に複数当てはまる方は、側頭筋・咬筋が働き続けている時間が長い可能性があります。
- 朝起きたときにあごがだるい、口が開けにくいと感じる日がある
- こめかみやえらを指で押すと硬く、痛気持ちよさを感じる
- 歯の噛み合わせ面が平らにすり減っている、歯の先端が欠けたことがある
- 頬の内側や舌のふちに、歯型のような線がついている
- 家族から寝ているときの歯ぎしりの音を指摘されたことがある
- 作業に集中していて、ふと気づくと奥歯を噛みしめている
歯のすり減りや欠け、詰め物が外れやすいといったサインが続く場合は、筋肉の問題としてだけ捉えず歯科での相談も選択肢に入れてください。
側頭部をゆるめるセルフケア3ステップ


デスクでも取り入れやすい手順を3つに整理しました。いずれも強く押しすぎないことが大前提です。こめかみ周辺は皮膚が薄く、力任せに押すと痛みが増したりあざになったりすることがあります。痛みが強いとき、頭痛の最中、めまいや吐き気を伴うときは行わないでください。感じ方には個人差があります。
作業の手を止め、唇は閉じたまま奥歯だけをそっと離します。舌先は上あごの前方に軽く触れる位置に置き、肩の力を抜いて息をゆっくり吐きます。これだけで側頭筋・咬筋が働いていない状態をつくれます。付箋やスマホのリマインダーで、1時間に1回この確認を挟みましょう。
指先1点で押し込むのではなく、手のひらの付け根や指の腹を面で当て、円を描くようにゆっくり動かします。目安は左右各20〜30秒、力加減は「皮膚が軽く動く程度」で十分。強くもみほぐす、痛みを我慢して押し続けるやり方は避けてください。
いすに深く座り直し、あごを軽く引いて、窓の外など数メートル先をぼんやり眺めます。ガイドラインが示す10〜15分の作業休止に合わせて立ち上がり、肩を回す動きを加えると姿勢の偏りを戻しやすくなります。
※セルフケアは医療行為ではありません。実施後に痛みやしびれが出た場合はただちに中止し、医療機関にご相談ください。
受診の目安と気をつけたいポイント
こめかみの痛みは筋肉の張りだけが原因とは限りません。頭痛は、脳や血管の病気のサインとして現れることもあります。次のような症状がある場合は、セルフケアを試す前に、速やかに医療機関(脳神経外科・脳神経内科・救急)を受診してください。
すぐに医療機関へ相談したい症状
- 突然の激しい頭痛(バットで殴られたような、短時間でピークに達する痛み)
- 今までに経験したことがない強さ・種類の頭痛
- 発熱を伴う頭痛、吐き気・嘔吐を伴う頭痛
- 手足の麻痺・しびれ、ろれつが回らない、言葉が出にくい
- 視野が欠ける、急に見えにくくなった、片目だけ見え方が変わった
- ものが二重に見える(複視)が突然現れた
- 意識がもうろうとする、けいれんがある
- 頭を打った後に頭痛が続いている
- 頭痛が日ごとに強くなっている、毎朝起床時に強い
日本頭痛学会は2次性頭痛(危険な頭痛)について、「いつもと違う突然の強い頭痛が生じた場合は、念のため病院に行きましょう」「半身の手足の動きが悪いという場合は、必ず検査をお受けください」と呼びかけています(出典:日本頭痛学会「2次性頭痛(危険な頭痛、他の病気に伴う頭痛)」)。くも膜下出血では嘔吐を伴いやすいことにも触れられています。判断に迷ったときほど、受診をためらわないという選択が大切です。
目の症状が中心なら眼科での確認を
目のかすみ、まぶしさ、充血、見え方の変化が主な症状であれば、まず眼科での確認が基本です。日本眼科学会は眼精疲労の要因として、度の合わない眼鏡の使用、老視の初期に無理な近業を続けること、緑内障・白内障・ドライアイなどの目の病気を挙げています。眼鏡やコンタクトの度数は自分では気づきにくい点です。
セルフケアで変わらない場合の考え方
作業環境と休憩の取り方を見直し、セルフケアを2週間ほど続けても変わらない、あるいは日常生活に支障が出ている場合は、「やり方が足りない」と考えて回数や強さを増やすのは避けてください。相談先は、頭痛そのものが続くなら脳神経内科・脳神経外科、見え方の変化があるなら眼科、あごの音や噛み合わせが気になるなら歯科、首・肩のこわばりが中心なら整形外科という順で検討するのが現実的です。整体院などで姿勢や身体の使い方をみてもらう場合も、医療機関で危険な原因が除外されていることが前提になります。
受診の際は、いつから・どんな痛み方で・何をしているときに強くなるかをメモして持参すると伝えやすくなります。市販の鎮痛薬を月に10日以上使う状態が続いている場合は、その点も必ず医師に伝えてください。
よくある質問(FAQ)
- こめかみが痛いのは、やはり目の疲れが原因なのでしょうか?
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原因は一つとは限りません。こめかみには噛むための側頭筋があり、食いしばりや姿勢の影響を受けます。日本眼科学会は眼精疲労の全身症状として頭痛や肩こりを挙げており、目の疲れと側頭部の張りが同時に起きることは珍しくありませんが、原因の特定には医療機関での確認が必要です。
- こめかみを強く押すと気持ちよいのですが、続けても問題ありませんか?
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強い刺激はおすすめできません。こめかみは皮膚が薄く、強く押し続けると痛みが増したり内出血につながったりすることがあります。面でやさしく触れる程度にとどめ、痛みが強いときや頭痛の最中は行わず、医療機関に相談しましょう。
- 食いしばりの癖は自分で気づけますか?
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気づいた時点で歯を離す習慣をつくると、日中の噛みしめは自覚しやすくなります。起床時のあごのだるさ、歯のすり減りや欠け、頬の内側の歯型も手がかりです。歯の状態を自分でみるのは難しいため、気になる場合は歯科で相談してください。
- 緊張型頭痛か片頭痛か、自分で判断してよいですか?
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自己判断はおすすめできません。本記事の比較表は学会の一般向け解説をもとにした整理で、診断基準ではありません。痛み方や持続時間をメモして医療機関で伝えましょう。
- どんなときに救急を考えるべきですか?
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突然の激しい頭痛、今までにない強さの頭痛、発熱や嘔吐を伴う頭痛、手足の麻痺やろれつが回らない、視野が欠ける、意識がもうろうとするといった症状があるときは、速やかに医療機関を受診してください。日本頭痛学会も、いつもと違う突然の強い頭痛や半身の動かしにくさについて受診・検査をすすめています。判断に迷うときこそ受診を優先しましょう。
まとめ


こめかみには側頭筋という噛むための筋肉があり、食いしばりや前傾姿勢が続くと張りとして感じられることが知られています。日本眼科学会が眼精疲労の全身症状に頭痛・肩こりを挙げているように、目の使いすぎと側頭部の負担は切り離せません。まずは厚生労働省のガイドラインが示す1時間ごとの休止と40cm以上の視距離という基本を見直し、歯を離す確認と強く押しすぎないセルフケアを無理のない範囲で取り入れてみてください。そのうえで、突然の激しい頭痛、今までにない頭痛、発熱・嘔吐、手足の麻痺やろれつが回らない、視野が欠けるといった症状があるときは、セルフケアより受診が優先です。変化がないまま続く場合も原因を一人で決めつけず、適切な窓口へ相談することが遠回りのようで近道になります。
参考文献・出典
- 公益財団法人 日本眼科学会「眼精疲労(目の疲れ)」
- 一般社団法人 日本頭痛学会「緊張型頭痛」
- 一般社団法人 日本頭痛学会「2次性頭痛(危険な頭痛、他の病気に伴う頭痛)」
- 日本神経学会「片頭痛(疾患・用語編 頭痛)」
- 厚生労働省「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(基発0712第3号)」(PDF)
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運営:一般社団法人中小企業集客支援機構 | 最終更新:2026年7月


