「夕方になると頭が重くなる」「パソコン作業を続けた日は目の奥がズーンと痛む」——目の疲れと頭痛がセットでやってくる、という声は少なくありません。ただ、ひと口に頭痛といっても痛む場所も痛み方もさまざまで、目の使いすぎだけが背景とは限りません。本記事では、目を使うことと頭痛が結びつく経路、痛む場所ごとの整理、緊張型頭痛と片頭痛の違い、市販の鎮痛薬を使うときの注意点、そして受診の目安までを、学会や公的機関の情報をもとにまとめます。
- 目と頭痛は複数の経路でつながる:毛様体筋の持続的な緊張、首や肩の筋緊張、前かがみの姿勢、まぶしさなどの光刺激が、それぞれ別のルートで関わると考えられています
- 痛む場所によって背景に挙がる要素が変わる:後頭部〜首すじ/前頭部・眉の上/目の奥/頭全体で傾向が異なります
- 緊張型頭痛と片頭痛は特徴が異なるが自己診断はできない:痛み方や持続時間に違いがあるとされますが、判断は医療機関の役割です
- 市販の鎮痛薬は「使う日数」に注意:使いすぎで頭痛の頻度が増える「薬剤の使用過多による頭痛(MOH)」が知られています
- 受診の目安を先に知っておく:突然の激しい頭痛、いつもと違う頭痛、発熱・嘔吐・麻痺・言語の異常を伴う頭痛は様子を見ない
目の疲れからくる頭痛とは?まず押さえたい基礎知識


「目の疲れからくる頭痛」は日常的な言い回しで、医学的な病名ではありません。近いものとして定義されているのが眼精疲労です。日本眼科学会は眼精疲労を、視作業を続けることで眼痛・かすみ・まぶしさ・充血などの目の症状や、頭痛・肩こり・吐き気などの全身症状が現れ、休息や睡眠をとっても十分に回復しえない状態と説明しています(出典:日本眼科学会「眼精疲労」)。一晩眠れば戻る一時的な疲れ目と、休んでも残る状態は分けて考えるのが出発点です。
目の使いすぎが頭痛に結びつく4つの経路
目を使うことと頭の痛みは、ひとつの原因でまっすぐつながっているわけではありません。解剖学的には、少なくとも次の4つの経路が関わると考えられています。
①ピント調節を担う毛様体筋のはたらき/目のなかの毛様体筋は、収縮して水晶体の厚みを変え、近くにピントを合わせます。日本眼科医会は、近くを見るときは毛様体筋を収縮させる努力をしていると説明し、屈折異常の状態によっては目の奥の痛みや肩こりを経験している人が多いと述べています(出典:日本眼科医会「屈折異常と眼精疲労」)。一定の近い距離を長時間見続ける作業は、この収縮を続ける作業でもあります。
②首・肩まわりの筋緊張/画面を凝視しているとき、人は無意識に頭を前へ出し、体をほとんど動かさなくなります。頭を支える首の後ろの筋肉には、その間ずっと負荷がかかり続けます。目と首こりの連鎖は別記事で詳しく扱っているため、ここでは「目の使用時間が長いほど首肩の負担も同時に積み上がる」点を押さえます。
③姿勢と作業環境/画面が高すぎる・近すぎる、書類と画面を何度も見比べるといった要因は、目と首の両方に同時に負担をかけます。厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」でも、ディスプレイはおおむね40cm以上の視距離を確保することが示されています。
④光刺激(まぶしさ・明暗差)/画面が周囲より極端に明るい、窓の映り込みがある、暗い部屋でスマートフォンを見る——こうした状況では、目を細めたり眉間にしわを寄せたりする動作が増え、顔まわりの筋肉を無意識に緊張させ続けることになります。
「目のせい」と決めつけないことも同じくらい大切
一方で、頭痛には目と関係のない原因で起こるものも数多くあります。画面作業が多い人ほど「また目の疲れだろう」と自己判断しやすく、受診の遅れにつながることもあります。目を使っていない日にも起きる頭痛、今までと質の違う頭痛、だんだん強くなる頭痛は、目の疲れという説明で片づけないことが大切です。
※本記事は一般的な情報の整理であり、個々の症状の診断を目的としたものではありません。気になる症状がある場合は医療機関にご相談ください。
どこが痛む?場所別に整理する目の疲れと頭痛


後頭部が重いのか、眉の上が押されるのか、目の奥がズーンとするのかで、感じ方はまったく違います。痛む場所は病名を決めるものではありませんが、自分の状態を人に伝えたり、環境を見直したりする手がかりにはなります。
| 痛む場所 | よくある感じ方 | 背景として指摘されること | 見直したい環境 |
|---|---|---|---|
| 後頭部〜首すじ | 重だるい、首の付け根から突き上げる | 頭を前に出した姿勢が続き、首の後ろに負荷がかかりやすい | 椅子と机の高さ、モニターの位置、休憩の間隔 |
| 前頭部・眉の上 | おでこが押される重さ、眉間のこわばり | まぶしさや明暗差で目を細める・眉を寄せる動作が増える | 画面の明るさ、照明、窓からの映り込み |
| 目の奥 | 奥がズーンと痛む、目を動かすと響く | 近くを見続ける調節の負担、度の合わない眼鏡、老視 | 画面までの距離、眼鏡の度数、作業距離に合った矯正か |
| 頭全体 | 鉢巻きで締めつけられる感じ、ぼんやりした重さ | 同じ姿勢が長く続き、全身の筋緊張と睡眠不足が重なる | 連続作業時間、睡眠時間、休憩の取り方 |
※上表は一般的に指摘される傾向の整理であり、痛む場所から頭痛の種類や原因を特定できるものではありません。
なお「こめかみが痛む」タイプは噛みしめに使う筋肉との関わりが指摘されるため、別記事で個別に整理しています。あわせていつ痛むかも情報になります。特に「毎朝目覚めたときから痛い」という出方は、日本頭痛学会が注意を促すパターンに含まれるため、後述の受診の目安を確認してください。
緊張型頭痛と片頭痛の特徴の違い【自己診断はできません】
目を使う生活のなかでよく語られる頭痛に、緊張型頭痛と片頭痛があります。どちらも繰り返し起こる一次性頭痛で、日本頭痛学会が一般向けに特徴を公開しています。以下はその解説をもとにした比較です。ただし自分の頭痛がどれに当たるかを判断するのは医療機関の役割であり、この表は診断の代わりにはなりません。
| 比べる項目 | 緊張型頭痛 | 片頭痛 |
|---|---|---|
| 痛みの性質 | 圧迫される、締めつけられるような非拍動性 | ズキズキ脈打つ拍動性(非拍動性の発作もある) |
| 痛む範囲 | 多くは両側性 | 片側性が代表的だが4割近くは両側性も経験 |
| 持続時間 | 30分から7日ほど | 発作的に起こり4〜72時間 |
| 吐き気・嘔吐 | 基本的に伴わない(慢性型で軽い吐き気の場合あり) | 伴うことも多い |
| 光・音への過敏 | あってもどちらか一方のみ | 光・音・においを不快と感じる人が多い |
| 体を動かしたとき | 歩行や階段の昇降で増悪しない | 階段昇降など日常動作で増強する |
| 前触れ | 特徴的な前兆は挙げられていない | 視覚症状などの前兆が5〜60分続いた後に始まることがある |
※日本頭痛学会「緊張型頭痛」「片頭痛」の一般向け解説をもとに編集部が整理。両方の特徴を併せ持つケースや、両方を繰り返すケースもあります。
この違いを知っておくと、目を使う環境への向き合い方も変わります。締めつけられる重さが両側に出て動いても強くならないタイプなら、姿勢や休憩の取り方といった環境面の見直しが検討しやすい領域です。一方、動くと響く・吐き気を伴う・光や音がつらいタイプは、無理に作業を続けず医療機関で相談するほうが現実的です。
目の疲れが背景にある頭痛への向き合い方【3ステップ】


後述の受診の目安に当てはまらず、目を使った日に重さが出やすいという方が生活のなかで見直せるポイントを3つにまとめました。症状をなくすことを保証するものではなく、負担のかかり方を整えるための考え方です。感じ方には個人差があります。
厚生労働省の情報機器作業ガイドラインでは、一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の連続作業までに10分〜15分の作業休止時間を設け、一連続作業時間内に1回〜2回程度の小休止を設けるよう示されています。休憩中は窓の外など遠くに視線を移すと、ピント調節の状態を切り替えやすくなります。
画面の上端が目の高さと同じかやや下か、周囲より極端に明るくないか、映り込みがないかを確認します。眉間にしわが寄る・目を細める自覚があれば、それはまぶしさのサインです。
日本頭痛学会は「頭痛ダイアリー」の活用と服薬日数の確認をすすめています。日付・痛んだ場所・強さ・作業時間・薬を飲んだかを1行書くだけでも、受診時に伝えられる情報がまとまります。
マッサージやセルフケアを取り入れるときの注意
「眼精疲労 頭痛 マッサージ」と検索する方は多いのですが、押し方には注意点があります。まず眼球そのものを押すことは避けてください。目のまわりは骨のふち(眼窩の縁)に沿って軽く触れる程度にとどめます。強く長く押すほど良いということはなく、痛みを感じる強さは行きすぎのサインです。強い痛み・しびれ・めまいが出るときは中止し、医療機関にご相談を。整体院で施術を受ける場合も頭痛が続いていることを先に伝えましょう。整体は医療行為ではなく、症状の診断や治療を行うものではありません。
市販の鎮痛薬を使うときに知っておきたいこと
頭が痛いとき市販の鎮痛薬に手が伸びるのは自然なことです。ただし頭痛の分野には、「薬剤の使用過多による頭痛(MOH:medication-overuse headache)」という、頭痛薬の使いすぎ自体が問題になる状態が知られています。市販薬を日常的に使う方ほど、この名前は先に知っておく価値があります。
薬剤の使用過多による頭痛(MOH)とは
日本頭痛学会は、片頭痛や緊張型頭痛のある方が頭痛の薬を過剰に使用すると、頭痛の頻度が増えて連日のように頭痛が起こるようになる、と説明しています。枠組みとしては、以前から頭痛疾患をもつ方に月15日以上の頭痛があり、3か月を超えて急性期の薬を使いすぎている状態が挙げられています。使用日数の目安は次のとおりです(出典:日本頭痛学会「薬剤の使用過多による頭痛」)。
- 非オピオイド系鎮痛薬(パラセタモール、NSAIDなど):月に15日以上
- トリプタン/エルゴタミン:月に10日以上
- 複合鎮痛薬(複数の成分を組み合わせたもの):月に10日以上
- オピオイド、複数の医薬品の組み合わせ:月に10日以上
注目したいのは、複数の成分を組み合わせた薬のほうが少ない日数で挙げられている点です。市販の頭痛薬には複合成分のものも多く、「市販薬だから安心」とは言えません。
どう向き合えばよいか
同学会は、対応の基本は使いすぎている薬をやめることだとし、それにより約70%が改善する一方、約30%は再発すると説明しています。あわせて、頭痛ダイアリーで服薬日数を確認し、自己判断で薬を飲み続けず早めに頭痛専門医へ相談することがすすめられています。服用中の薬をどうするかを自己判断で決めるのは避け、必ず医師・薬剤師に相談してください。市販薬の成分や飲み方も薬剤師に相談するのが確実です。まずは「月に何日飲んでいるか」を数えられる状態にしておくことが最初の一歩になります。
受診の目安と受診先の振り分け
この記事でもっとも大切なセクションです。頭痛には、原因となる病気があって起こる二次性頭痛が含まれます。目の疲れという説明で様子を見てしまうことが、いちばん避けたい状況です。
すぐに医療機関へ(脳神経外科・脳神経内科)
日本頭痛学会は、次のような場合に速やかな受診が必要としています。ひとつでも当てはまるときは、セルフケアより受診を優先してください。
- これまでに経験がないひどい頭痛が起きた
- 突然発症し、短時間でピークに達する頭痛
- 頭痛に発熱を伴う
- 頭痛に手足の麻痺やしびれを伴う
- ろれつが回らない、言葉が出にくいなど言語の異常を伴う
- 強い嘔吐を伴う、意識がもうろうとする
- 数週間のうちに悪化してくる頭痛(脳腫瘍や慢性硬膜下血腫などが考えられるとされます)
- 毎朝頭痛があり、起き上がって数時間で少し楽になるという出方をする
- 頭を打った後に続く頭痛、頭部外傷から1〜3か月後の頭痛と嘔吐、半身の動かしにくさ
- 後頸部の激しい痛みに加え、めまい・声のかすれ・飲み込みにくさ・体の感覚の異常がある
- 50歳を過ぎてから初めて起こった持続性の頭痛
(出典:日本頭痛学会「頭痛とは」「二次性頭痛」)。学会はこうした場合、脳神経外科・脳神経内科での的確な診断が必要だとしています。迷うなら待たずに連絡するのが安全側の選択です。
眼科の受診を考えたいとき
- 急に視力が落ちた、見え方が急に変わった
- 視野の一部が欠けている、暗く見える範囲がある
- 片目だけに症状が出ている
- 突然、物が二重に見えるようになった
- 目に強い痛みがある、充血が続く、光の周りに輪が見える
- 眼鏡やコンタクトが以前より合わない感じが続く、手元が見えにくくなってきた
日本眼科学会は、眼精疲労の背景として度の合わない眼鏡の使用、老視の初期に無理な近業を続けること、ドライアイ・緑内障・白内障などの眼疾患を挙げています。「見え方の土台」が合っていないまま作業環境だけを整えても、負担のかかり方は変わりません。
頭痛外来・脳神経内科を考えたいとき
命に関わるサインはないものの、頭痛が生活の負担になっている場合も専門の窓口があります。月に何度も頭痛が起きる、鎮痛薬を使う日数が増えている、寝込んで予定を変更することがある——日本頭痛学会は、こうした慢性の頭痛には適切な対応法があると述べています。我慢し続ける必要はありません。
| こんなとき | 主な受診先 | 補足 |
|---|---|---|
| 突然の激しい頭痛、発熱・嘔吐・麻痺・言語の異常を伴う | 脳神経外科/脳神経内科 | 様子を見ずに受診。状況により救急へ連絡を |
| 急な視力低下、視野欠損、片目だけの症状、突然の複視 | 眼科 | 目の症状が主体のときはまず眼科へ |
| 頭痛が月に何度も起きる、鎮痛薬を使う日数が増えている | 頭痛外来/脳神経内科 | 頭痛ダイアリーを持参すると相談が進めやすい |
| 危険なサインはなく、姿勢や作業環境の負担が気になる | 整骨院・整体院などの選択肢も | 医療行為ではなく、診断や治療を目的とするものではありません |
※上表は一般的な振り分けの整理です。判断がつかない場合は、かかりつけ医や地域の医療相談窓口にご相談ください。
よくある質問(FAQ)
- 目の疲れをとれば、頭痛もなくなりますか?
-
そう言い切ることはできません。頭痛には目と関係のない原因で起こるものも多数あります。目を使っていない日にも起きる、これまでと質が違う、だんだん強くなる——こうした頭痛は目の疲れと片づけずに医療機関へご相談ください。
- 眼精疲労による頭痛に、マッサージは意味がありますか?
-
感じ方には個人差があり、効果を保証できるものではありません。眼球そのものを押さない、骨のふちに沿って軽く触れる程度にとどめる、痛みを感じる強さまで押さない、が基本です。強い痛み・しびれ・めまいが出るときは中止してください。
- 目が疲れて頭が痛いとき、温めるのと冷やすのはどちらがよいですか?
-
状況によって考え方が変わるため一律には言えません。温める・冷やすの判断は別記事で整理していますので、そちらをご覧ください。いずれの場合も低温やけどを避けるため温度と時間に注意が必要です。
- 眼鏡やコンタクトが合っていないと、頭痛につながることはありますか?
-
日本眼科学会は眼精疲労の原因のひとつに度の合わない眼鏡の使用を挙げ、日本眼科医会は屈折異常の状態によっては目の奥の痛みや肩こりを経験している人が多いと述べています。長く同じ度数を使っている方は、作業距離に合った矯正かを眼科で確認してみてください。
- 市販の頭痛薬は、どのくらいの頻度までなら使ってよいのでしょうか?
-
個々の判断は医師・薬剤師にご相談ください。目安として日本頭痛学会は、非オピオイド系鎮痛薬で月15日以上、複合鎮痛薬やトリプタンなどで月10日以上の使用が3か月を超えて続く場合を挙げています。まずは服薬した日を記録し、月あたりの日数を把握しましょう。
まとめ


目の疲れと頭痛の関係は、毛様体筋のはたらき・首肩の筋緊張・姿勢・光刺激という複数の経路から説明され、痛む場所によって背景に挙がる要素も変わります。緊張型頭痛と片頭痛の特徴の違いは、自己診断の道具ではなく医療機関へ状況を伝えるための整理です。生活面では、1時間ごとに作業を区切る/視距離と画面の明るさを整える/頭痛の出方と服薬日を記録する、の3つが土台になります。市販薬は薬剤の使用過多による頭痛(MOH)を知り、月あたりの服薬日数を把握しておくこと。そして突然の激しい頭痛、いつもと違う頭痛、発熱・嘔吐・麻痺・言語の異常を伴う頭痛、数週間で悪化する頭痛は迷わず脳神経外科・脳神経内科へ、目の側に急な変化があるときは眼科へ。「目の疲れだろう」で止めないことが、遠回りに見えていちばん確かな一歩です。
参考文献・出典
- 日本眼科学会「眼精疲労(目の疲れ)」
- 日本眼科医会「屈折異常と眼精疲労」
- 日本頭痛学会「頭痛とは」
- 日本頭痛学会「片頭痛」
- 日本頭痛学会「緊張型頭痛」
- 日本頭痛学会「薬剤の使用過多による頭痛」
- 日本頭痛学会「二次性頭痛(危険な頭痛、他の病気に伴う頭痛)」
- 厚生労働省「事務所における労働衛生対策(情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン)」
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運営:一般社団法人中小企業集客支援機構 | 最終更新:2026年8月


