「夕方になると画面の文字がにじむ」「目の奥が重くて肩まで張る」——パソコン作業が続いた日ほど、心当たりのある方は多いのではないでしょうか。目の疲れ対策というとツボ押しやマッサージが知られていますが、「伸ばす・動かす」というストレッチの視点で整理すると、席を立たずに1分でできることが見えてきます。本記事では、眼精疲労に関わるストレッチを「目」と「体」の2系統に分け、厚生労働省のガイドラインが示す休憩の取り方も踏まえて手順と注意点を解説します。
- ストレッチは「押す」ではなく「動かす」ケア:道具も要らず手も汚れないため、デスクで取り入れやすい
- 目のストレッチは2種類:眼球をゆっくり動かす運動と、遠くと近くを交互に見る「遠近の切り替え」
- 体のストレッチは首・肩・胸まわりが軸:画面をのぞき込む姿勢で縮みやすい部位を伸ばす
- 頻度の目安は「1時間に1回」:厚生労働省のガイドラインでは1時間以内で1サイクルとし、間に10〜15分の作業休止、連続作業中にも1〜2回の小休止が示されている
- 強く動かしすぎない・めまいが出たら中止:網膜剥離の既往がある方や目の手術を受けた方は自己判断で行わず医師に確認を
眼精疲労のストレッチとは?「押すケア」との違いを整理


「眼精疲労のストレッチ」と調べると、ツボ押しやマッサージの情報が多く出てきます。ただ、ストレッチが本来指すのは筋肉を伸ばす・関節を動かすこと。押すケアとは目的も手順も違うため、まず違いを整理しましょう。
「動かす対象」は目の中と体の2か所
ひとつは目そのものを動かす筋肉です。眼球には上下左右や斜めへ目を向ける筋肉(外眼筋)が付き、目の中にはピント合わせに関わる筋肉(毛様体筋)があります。画面を見ている間は視線が一点にとどまり、ピントも近い距離に固定されたまま。「使いすぎ」というより「同じ位置で止まり続けている」状態に近いわけです。
もうひとつは体の筋肉です。画面を見るとき、人は頭を前に出し、肩を巻き込み、背中を丸めがち。この姿勢が続くと首の後ろや肩は伸ばされたまま、胸の前は縮んだまま固定されます。
「押す」と「動かす」は役割が違う
押す・もむケアは、こわばりを感じる一点に外から圧をかける方法です。一方ストレッチは、筋肉を長さの方向へ伸ばし、関節を可動範囲まで動かして止まっていた状態をリセットする方法と言えます。優劣ではなく目的の違いです。オフィスでは手を洗ってから顔に触れる、メイクが崩れるといった理由で押すケアが選びにくいこともあり、その点ストレッチは座ったまま・手を使わずにできるのが利点です。
なぜ「1分」で区切るのか
長時間やる必要はありません。大切なのは「同じ状態が続く時間を区切る」頻度です。厚生労働省の「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」では、作業管理の考え方として、1日の作業時間が長くなりすぎないようにしたうえで1時間以内で1サイクルとし、サイクルの間に10〜15分の作業休止時間を設け、連続作業中にも1〜2回の小休止を入れることが示されています(出典:厚生労働省ほか「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」)。
この「1〜2回の小休止」にあたるのが本記事の1分ストレッチです。まとまった休憩が取れない日でも、作業を止めて視線と姿勢を切り替える短い時間を挟むことが、ガイドラインの考え方に沿った実践になります。「まとめて長く」より「短くこまめに」のほうが続けやすいはずです。
※本記事は情報提供を目的とした一般的な解説です。特定の症状が軽くなることを保証するものではなく、感じ方には個人差があります。
目のストレッチと体のストレッチ|2系統の使い分け


眼精疲労に関わるストレッチは「目」と「体」に分けて考えると迷いません。どちらか一方に絞るより、状況に合うほうを選べるようにしておくほうが実用的です。
①目のストレッチ(1)眼球をゆっくり動かす
顔を正面に固定したまま目だけを上・下・右・左と斜め4方向へゆっくり向けるのが眼球運動です。ポイントは「ゆっくり」。素早く振るのではなく、各方向で1〜2秒止まる程度の速さが目安で、1周(8方向)が約20秒です。あわせて日本眼科医会は、パソコン作業中はまばたきが減りやすいため「ときどき目をパチパチさせて、意識的にまばたきの回数を増やす」ことを挙げています(出典:日本眼科医会「パソコンと目」)。
②目のストレッチ(2)遠近の切り替え
もうひとつが遠くと近くを交互に見る「遠近の切り替え」です。近い距離にピントを合わせ続けた状態から、いったん遠くへ視線を送り、また手元へ戻す。窓があれば外の建物や空、なければ部屋のいちばん奥の壁を選びます。
この発想は公的なガイドラインとも重なります。厚生労働省のガイドラインでは、機器の調整としてディスプレイは眼から40cm以上の距離を確保し、画面の上端は眼の高さまでとすることが示されています。日本眼科医会も、目とモニターの間を40〜50センチとること、1時間の連続作業なら15分くらいの休みを取り、難しい場合は窓の外を眺めて目を休める工夫を挙げています。「距離を確保したうえで、ときどきもっと遠くを見る」のが基本形です。
③体のストレッチ(1)首・肩まわり
片手を頭の反対側に添え、頭をゆっくり真横へ倒して首の側面を伸ばす。次に両肩をすくめて持ち上げ、ストンと落とす。さらに肩を後ろへ回して肩甲骨を寄せる。いずれも反動をつけず、痛みの手前で止めるのが原則です。首を勢いよくぐるぐる回す動きは無理な角度が入りやすいため避けましょう。
④体のストレッチ(2)胸まわりを開く
見落とされやすいのが胸の前です。椅子に浅く座り直し、両手を体の後ろで組むか両ひじを後ろへ引いて肩甲骨を寄せ、胸を開いて20秒キープ。息を吐きながら広げると呼吸を止めずに行えます。モニターの高さや椅子の調整は、姿勢をテーマにした別記事も参考にしてください。
| 種類 | 主な内容 | いつ行うか | 目安の時間 | こんなときに |
|---|---|---|---|---|
| 目(眼球運動) | 顔を固定し目だけを8方向へ動かす | 作業の区切り | 約20秒 | 視線が画面に張りついていたとき |
| 目(遠近の切り替え) | 遠くと手元を交互に見る | 1時間に1回 | 20〜30秒 | 近い距離を見続けた後 |
| 体(首・肩) | 首を横に倒す/肩甲骨を寄せる | 作業休止時間 | 各20秒 | 首や肩の張りが気になるとき |
| 体(胸・背中) | 手を後ろで組んで胸を開く | 午後・夕方 | 各20秒 | 前かがみが長く続いた日 |
※上表は一般的な目安です。時間や回数は体調に応じて調整し、痛みや違和感があるときは行わないでください。
デスクで1分|3ステップの手順


ここまでの内容を座ったまま約1分で通せる3ステップにまとめます。順番は「遠く→目を動かす→体を伸ばす」。まず視線を遠くへ逃がしてから始めるのがポイントです。
手を止め、背もたれに寄りかかります。窓の外や部屋のいちばん遠い壁を5秒ほど眺め、次に手元の指先へ視線を移し、また遠くへ。3〜4往復します。ピントを合わせようと力まず、「見えたら次」くらいで構いません。
頭は正面のまま、目だけを「上→右上→右→右下→下→左下→左→左上」の順にゆっくり向けて1周。各方向で1〜2秒止まる速さで十分で、限界まで引っぱる必要はありません。めまいを感じたら中止して休みます。
右手を左のこめかみに添え、頭をゆっくり右へ倒して首の左側を10秒伸ばします。反対側も同様に。最後に両ひじを後ろへ引いて肩甲骨を寄せ、息を吐きながら胸を開いて10秒キープ。反動をつけず呼吸を止めないこと。
ストレッチの原則は「反動なし・痛みの手前・呼吸・秒数」
厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレッチングの実際」では、実施時のポイントとして「時間を20秒以上かけて伸ばす」「伸ばす部位を意識する」「痛くなく気持ちよい程度に伸ばす」「呼吸を止めない」「部位を適切に選択する」の5点が挙げられ、痛いほど伸ばすと伸張反射が働いてかえって筋が硬直する、とも説明されています(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット)。要点は次の4つです。
- 反動をつけない:勢いで振る・弾ませる動きは避け、じわりと伸ばす
- 痛みの手前で止める:「痛気持ちいい」を超えない
- 呼吸を止めない:息を止めて力むと血圧が上がる場合があるため、吐きながら伸ばす
- 秒数は20秒以上を目安に:最初の5〜10秒は伸ばし加減を決める時間と考える
ただしこれは体の筋肉についての原則です。目の運動は大きな筋肉ほど強く長く伸ばすものではないため、「ゆっくり動かす」「無理をしない」を優先してください。続けるコツは、会議の後やメール送信後などすでに毎日起きている行動に紐づけることです。
気をつけたいポイントと受診の目安
眼球を強く・速く動かしすぎない
勢いよく目を振り回すのは避けましょう。眼球運動は速さや回数を競うものではありません。1セットは1周程度にとどめ、何十回も連続でくり返さないこと。眉間にしわが寄っているようなら力みすぎのサインです。
めまい・吐き気を感じたら中止する
目を動かしている最中や直後にめまい・ふらつき・吐き気を感じることがあります。その場合はすぐに中止し、目を閉じて安静に。くり返し起こるときは自己判断で続けず医療機関へ相談しましょう。首のストレッチでも、めまいやしびれが出たら中止します。
眼球運動を避けたほうがよいケースがある
すべての人に目の運動が向くわけではありません。網膜剥離の既往がある方、網膜裂孔を指摘された方、白内障手術やレーシックなど目の手術を受けた方、強度近視や緑内障で眼科に通院中の方は、自己判断で始めないでください。日本眼科学会の解説によれば、網膜剥離では初期に飛蚊症や光視症がみられることがあり、進行すると視野の一部が欠ける、急な視力低下といった症状が生じるとされ、放置すれば失明につながる病気で早期の発見が重要とされています(出典:日本眼科学会「網膜剥離」)。該当する方は主治医に確認したうえで行ってください。
こんな症状があるときは、ストレッチより先に受診を
次の症状があるときは、セルフケアより先に眼科または脳神経外科を受診してください。
- 急な視力低下:短期間で見え方が大きく変わった
- 視野が欠ける:カーテンがかかったように一部が見えない
- 急に増えた飛蚊症・光視症:黒い点が急に増えた、閃光が走る
- 片目だけの症状:片方だけ見えにくい、痛い、赤い
- 突然の複視:ものが二重に見える状態が続く
- 激しい頭痛・吐き気を伴う頭痛:経験のない強い頭痛、嘔吐を伴う
- 目の激しい痛み・充血:目の奥がえぐられるように痛む
- 手足のしびれ・ろれつが回らない:目以外の神経症状を伴う
これらは目の病気だけでなく、脳や血管に関わる状態のサインであることもあります。特に片目だけの症状や突然の発症は時間が勝負になるため、「疲れ目だろう」と自己判断しないことが大切です。
よくある質問(FAQ)
- 目のストレッチを続ければ視力は上がりますか?
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視力そのものが上がると保証できるものではありません。ここで紹介しているのは、視線と姿勢が固定された状態を作業の合間に区切る工夫です。見え方の変化が気になる場合は眼科で検査を受けてください。
- 1日に何回くらい行えばよいですか?
-
決まりはありませんが、厚生労働省のガイドラインが示す「1時間以内で1サイクル、間に10〜15分の作業休止、連続作業中に1〜2回の小休止」が目安になります。1時間に1回・1分程度を目標にすると続けやすいでしょう。
- 目と体、どちらのストレッチを優先すべきですか?
-
状況によります。短い小休止しか取れないときは、席を立たずにできる遠近の切り替えだけでも構いません。夕方に首・肩の張りが気になるときは、立ち上がって体のストレッチを行うほうが姿勢の切り替えになります。
- コンタクトレンズをつけたままでも大丈夫ですか?
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レンズを外さなくても行えますが、ずれる感じや乾き、しみるような違和感があるときは中止してください。装用時間が長い日は、まばたきを意識的に増やす、装用スケジュールを守るなど基本の使い方も見直しましょう。
- ストレッチをしても目の重さが続くときは?
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状態が変わらない、日常生活に支障が出ているときは眼科で検査を受けてください。眼鏡やコンタクトの度数が合っていない、ドライアイなど別の要因が背景にあることもあります。急な視力低下を伴う場合は様子を見ずに受診を。
まとめ


眼精疲労のストレッチは、「目(眼球運動・遠近の切り替え)」と「体(首・肩・胸まわり)」の2系統に分けると整理しやすくなります。押す・もむケアとは役割が異なり、座ったまま短時間でできるのが強みです。頻度は「1時間以内で1サイクル、間に10〜15分の作業休止、連続作業中に1〜2回の小休止」というガイドラインの考え方を目安にしましょう。
実践では、反動をつけない・痛みの手前で止める・呼吸を止めない・20秒以上を目安にするという原則を守ること。そして眼球を強く速く動かしすぎない、めまいを感じたら中止することが大切です。網膜剥離の既往や目の手術を受けた経験がある方は、自己判断で始めず医師に確認を。急な視力低下、視野の欠け、片目だけの症状、激しい頭痛を伴う場合は受診を優先しましょう。感じ方には個人差がありますので、無理のない範囲で続けてください。
参考文献・出典
- 厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(PDF)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレッチングの実際」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「ストレッチングの効果」
- 公益社団法人 日本眼科医会「パソコンと目」
- 公益財団法人 日本眼科学会「網膜剥離」
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運営:一般社団法人中小企業集客支援機構 | 最終更新:2026年8月


