「布団に入ってもなかなか寝つけない」「朝すっきり起きられない」「日中も眠くてだるい」——その不調は、睡眠の“質”が下がっているサインかもしれません。睡眠は時間の長さだけでなく、「ぐっすり眠れた」という休養感(睡眠休養感)が重要とされています。本記事では、睡眠の質が下がる原因と、今日から始められる改善のコツを、厚生労働省の情報をもとに管理栄養士の視点でわかりやすく整理しました。
- 起床・就寝時刻を一定にし、朝に光を浴びる:体内時計が整い、寝つきが良くなる
- 就寝3〜4時間前からカフェインを控える:覚醒作用が入眠を妨げる
- 就寝90分前に40℃程度の入浴:深部体温の低下で深い睡眠が増えやすい
- 寝室は暗く静かで快適な温度・湿度に:スマホは寝床に持ち込まない
そもそも「睡眠の質」とは?カギは睡眠休養感
厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は「6時間以上の睡眠時間を確保する」ことと「睡眠休養感を高める」ことがすすめられています(出典:厚生労働省)。睡眠休養感とは、朝目覚めたときに「よく休めた」と感じられる感覚のこと。つまり睡眠は、量(時間)と質(休養感)の両輪で考えることが大切です。長く寝ても休まった感じがない場合は、質の低下を疑ってみましょう。実際、睡眠で休養がとれていると感じる人の割合は近年減少傾向にあるとされ、多くの人に共通する課題になっています。
次のようなサインが続く場合、睡眠の質が下がっている可能性があります。
| タイミング | 睡眠の質が下がっているサイン |
|---|---|
| 就寝時 | 布団に入っても30分以上寝つけない日が多い |
| 夜間 | 途中で何度も目が覚める/一度起きると再び眠れない |
| 起床時 | 朝すっきりしない、疲れが残っている(休養感が低い) |
| 日中 | 強い眠気・だるさ・集中力の低下が続く |
眠りの仕組み|ノンレム睡眠・レム睡眠と90分のリズム


睡眠は一晩じゅう同じ深さで続くわけではなく、「脳を休めるノンレム睡眠」と「体を休め記憶の整理に関わるとされるレム睡眠」が約90分の周期で交互に繰り返されているとされます(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット)。眠り始めは深いノンレム睡眠が多く、明け方に近づくほど浅いノンレム睡眠とレム睡眠が増えていきます。つまり睡眠の前半でどれだけ深く眠れるかが、朝の休養感を大きく左右します。
| 種類 | 主な役割 | 特徴 |
|---|---|---|
| ノンレム睡眠 | 大脳を休ませる(脳の休息) | 深さで4段階に分かれる。眠り始め〜前半に多く、深い段階ほど休養効果が高いとされる |
| レム睡眠 | 体を休め、記憶の整理に関わるとされる | 眼球が素早く動き、夢を見やすい。明け方(睡眠後半)に増える |
寝つきと深い眠りには、2つの体のリズムが関わっています。ひとつは「眠りを誘うホルモン」とされるメラトニンで、就寝の約2時間前から分泌が始まり夜間に多くなります。強い光を浴びると分泌が抑えられるため、夜のスマホや明るい照明は寝つきを妨げる一因になります。もうひとつは体の内部の温度である深部体温で、これが下がるタイミングで眠気が強まるとされます。入浴で一度上げた深部体温が下がる約90分後に眠くなりやすいのは、このためです(出典:厚生労働省 睡眠ガイド2023/e-ヘルスネット)。
自分に必要な睡眠時間の目安|年代別
必要な睡眠時間には個人差が大きいものの、厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、年代ごとの目安が示されています。
| 年代 | 睡眠時間の目安 |
|---|---|
| 成人 | 6時間以上を目安に確保する |
| 中学・高校生 | 8〜10時間 |
| 小学生 | 9〜12時間 |
| 高齢者 | 寝床にいる時間は8時間以内が目安(長く寝床にいすぎない) |
大切なのは時間の長さだけを追い求めることではなく、日中に強い眠気が出ないか、朝に「よく休めた」と感じられるか(睡眠休養感)を目安にすることです。長く眠れば良いというものではなく、特に高齢者は長く寝床にいすぎるとかえって眠りが浅くなることもあるとされています。
見過ごせない「睡眠負債」
平日の睡眠不足が積み重なった状態は「睡眠負債」と呼ばれます。休日の寝だめでまとめて返済することはできず、むしろ起床時刻が大きくずれることで体内時計が乱れ、海外旅行の時差ぼけに似た不調(社会的時差ぼけ)を招くとされます。睡眠不足の慢性化は、肥満・高血圧・2型糖尿病などの生活習慣病リスクとの関連も指摘されています。実際、睡眠不足が続くと食欲を抑えるホルモン(レプチン)が減り、食欲を高めるホルモン(グレリン)が増えて食べ過ぎにつながることが分かっているとされます(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット「睡眠と生活習慣病との深い関係」)。
睡眠の質が下がる主な原因
生活リズムの乱れ(体内時計のズレ)
私たちの体には約24時間周期の体内時計が備わっており、光を浴びるタイミングで調整されています。起床・就寝時刻がバラバラだったり、休日に朝寝坊で「寝だめ」をしたりすると、体内時計がずれて寝つきや目覚めが悪くなりやすくなります。
就寝前のスマホ・カフェイン・アルコール
就寝前のスマホやパソコンの光、強い照明は脳を覚醒させ、寝つきを妨げます。カフェインの覚醒作用は数時間続き、人によっては摂取後5〜7時間ほど残るとされ、夕方以降の摂取は入眠を妨げたり睡眠を浅くすることがあります。1日のカフェインはコーヒー4杯程度(約400mg)を上限の目安に、午後は控えめにするとよいでしょう(出典:厚生労働省 睡眠ガイド2023)。また、寝酒(アルコール)は寝つきを良くするように感じても、代謝の過程で睡眠を妨げる物質が生じ、夜中の目覚めを増やして睡眠を浅くするため逆効果とされています。
ストレス・運動不足・睡眠環境
強いストレスや不安は交感神経を高ぶらせ、寝つきを悪くします。運動不足で日中の活動量が少ないと、心地よい眠気が起こりにくくなります。さらに、明るすぎる・うるさい・暑い/寒い寝室環境も、眠りの質を下げる要因になります。
睡眠の質を上げる生活習慣


睡眠ガイド2023では、良い睡眠のために「適度な運動としっかり朝食」「光・温度・音に配慮した環境づくり」「嗜好品との付き合い方」などが挙げられています。1日の流れに沿って、できることから始めましょう。
【朝】光を浴びて体内時計をリセット
起床後はカーテンを開けて朝の光を浴びましょう。朝の光は体内時計をリセットし、夜の自然な眠気につながります。起床時刻をできるだけ一定にし、朝食をとることも体内時計を整えるのに役立ちます。
【昼】適度な運動・昼寝は短く
日中のウォーキングなど適度な運動は、寝つきを良くし深い睡眠を増やすとされ、1日60分程度の身体活動が一つの目安とされています。運動は日中〜夕方が理想で、就寝の2〜4時間前までにすませると効果的です(就寝直前の激しい運動は逆に眠りを妨げることがあります)。眠気が強い日は昼寝も有効ですが、15〜20分程度・午後の早い時間までにとどめると、夜の睡眠に影響しにくくなります。
【夜】入浴・照明・寝室環境を整える
就寝の90分ほど前に40℃程度のぬるめのお湯にゆっくり入ると、いったん上がった深部体温が下がるタイミングで寝つきやすくなり、深い睡眠が増えやすいとされています(出典:厚生労働省 e-ヘルスネット)。就寝直前の42℃以上の熱い風呂は体を覚醒させるため逆効果です。夜は照明を落とし、スマホは寝床に持ち込まず、寝室は暗く静かで快適な温度・湿度に保ちましょう。
眠りを整える「夜のルーティン」3ステップ
40℃程度のぬるめのお湯に10〜15分。上がった体温が下がるころに自然な眠気が訪れます。
就寝1時間前から部屋を少し暗めに。ブルーライトを避け、脳を「休むモード」に切り替えます。
就寝・起床のリズムを一定に。休日の寝だめは体内時計を乱すため、差は1〜2時間以内が目安です。
ぐっすり眠れる寝室環境の整え方|光・温度・音


寝つきや眠りの深さは、寝室の環境にも大きく左右されます。特に「光・温度・音」の3つを整えることが、質の高い睡眠につながるとされています。
| 要素 | 目安・ポイント |
|---|---|
| 光 | 就寝時はできるだけ暗く。日中は1,000ルクス以上の明るい光を浴びると、夜のメラトニン分泌が促されるとされる |
| 温度 | 冬は室温18℃以上が目安(WHO推奨)。夏はエアコンで暑さを避け、寝床内を快適に保つ |
| 音 | できるだけ静かに。気になる場合は遮光・防音カーテンや、寝床を窓から離す配置換えも有効 |
| 寝具 | 季節に合った寝具・パジャマで、暑すぎ・寒すぎを防ぐ |
特に注意したいのが就寝前の光です。スマホやLED照明が多く含む青色の強い光(ブルーライト)は体内時計への影響が大きく、暖色に調光しても完全には避けられないとされます。就寝の1〜2時間前からは照明を落とし、寝床にスマホを持ち込まないようにしましょう。夜間にトイレで起きる方は、まぶしくない足元灯を使うと目が覚めにくくなります。
睡眠をサポートする食べ物・成分


「これを食べれば必ず眠れる」という食品はありませんが、睡眠に関わる栄養素を含む食品をバランスよくとることは、生活習慣を整えるうえで役立ちます。夕食は就寝の2〜3時間前までにすませ、消化に負担の大きい食事や食べ過ぎは避けましょう。
睡眠に関わるホルモン「メラトニン」は、必須アミノ酸のトリプトファンを原料に、セロトニンを経てつくられるとされます。トリプトファンは体内でつくれず食事からとる必要があるため、朝食をしっかりとって朝の光を浴びることが、夜の自然な眠気につながる体内リズムづくりに役立ちます。
| 成分 | 特徴 | 多く含む食品の例 |
|---|---|---|
| トリプトファン | 体内でセロトニン・メラトニンの材料になる必須アミノ酸 | 牛乳・ヨーグルト・大豆製品・バナナ・卵 |
| GABA(ギャバ) | リラックスに関わる成分。機能性表示食品の届出例もある | 発芽玄米・トマト・一部の発酵食品 |
| グリシン・テアニン | 睡眠の質に関する機能性表示食品として使われることがある | サプリ・機能性表示食品など |
※機能性表示食品は、事業者の責任で機能性を表示するために消費者庁へ届け出られた食品です。効果には個人差があり、薬のような治療効果を保証するものではありません。
なお睡眠ガイド2023では、睡眠の質を高める特定の食品は明確になっていないとされています。特定の食品に頼るよりも、主食・主菜・副菜のそろったバランスのよい食事を続けることが基本です。
ぐっすり眠るための「理想の1日」タイムライン
これまでのポイントを1日の流れに落とし込むと、次のようになります。すべてを完璧にする必要はなく、取り入れやすいものから始めてみましょう。
| 時間帯 | やること |
|---|---|
| 朝(起床後) | カーテンを開けて光を浴びる/朝食をとる/起床時刻をできるだけ一定に |
| 昼 | 適度な運動・活動。昼寝は15〜20分・午後の早い時間まで |
| 夕方 | カフェインは控えめに。運動は就寝の2〜4時間前までに |
| 夜(就寝90分前) | 40℃程度のぬるめのお湯に10〜15分ゆっくり入浴 |
| 就寝前(1〜2時間前) | 照明を落とす・スマホを手放す・寝室を暗く静かに保つ |
やってはいけないNG習慣
- 寝酒(アルコールで寝つこうとする):夜中の目覚めが増え、睡眠が浅くなる。
- 就寝直前の熱い風呂・激しい運動:体を覚醒させ、かえって寝つけなくなる。
- 休日の「寝だめ」:体内時計が乱れ、週明けの不調につながる。
- ベッドでのスマホ・動画視聴:光と情報刺激で脳が覚醒する。
- 眠れないまま布団で粘る:かえって不安が強まることも。いったん起きて落ち着いてから戻る。
それでも眠れないと感じるときの選択肢
生活習慣を整えても寝つきが気になるときは、睡眠の質に関する機能性を届け出た機能性表示食品やサプリメントを補助的に取り入れる方法もあります(参考:国立医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報)。ただし、サプリはあくまで補助であり、生活習慣を整えることが基本です。持病がある方・薬を服用中の方は、利用前に医師・薬剤師に相談してください。
「どんな成分・商品を選べばいいか迷う」という方は、選び方を比較した記事も参考にしてみてください。
- 寝つけない・途中で目が覚める状態が数週間以上続く
- 日中の強い眠気で仕事や生活に支障が出ている
- 大きないびき・呼吸の止まりを指摘された(睡眠時無呼吸の可能性)
これらに当てはまる場合は、自己判断でサプリや市販薬に頼りすぎず、医療機関(睡眠外来・かかりつけ医など)に相談しましょう。本記事は一般的な情報提供であり、診断・治療に代わるものではありません。
よくある質問
- 睡眠時間は何時間とればいいですか?
-
厚生労働省の睡眠ガイド2023では、成人は6時間以上の睡眠時間の確保と、朝の休養感を高めることがすすめられています。必要な時間には個人差があるため、日中に強い眠気が出ない程度を目安にしましょう。
- 寝つきを良くするには何をすればいいですか?
-
起床・就寝時刻を一定にし、朝に光を浴びること、就寝90分前の入浴、就寝前のカフェイン・スマホを控えることが基本です。寝室を暗く静かに保つのも効果的です。
- 寝る前にお酒を飲むと眠れるのですが問題ありますか?
-
寝酒は寝つきを良くするように感じても、夜中の目覚めを増やし睡眠を浅くするため、質の面では逆効果とされています。習慣化は避けるのが望ましいです。
- カフェインは何時間前まで大丈夫ですか?
-
カフェインの覚醒作用は3時間程度続くとされ、就寝前3〜4時間以内の摂取は入眠を妨げたり睡眠を浅くすることがあります。午後以降は量やタイミングに注意しましょう。
- 昼寝はしてもいいですか?
-
強い眠気があるときの昼寝は有効ですが、15〜20分程度・午後の早い時間までにとどめると、夜の睡眠に影響しにくくなります。長すぎる昼寝や夕方以降の仮眠は避けましょう。
- 睡眠サプリだけで睡眠の質は良くなりますか?
-
サプリメントや機能性表示食品はあくまで補助的な位置づけです。生活習慣を整えることが基本で、その上で必要に応じて取り入れるのがおすすめです。持病がある方・服薬中の方は医師に相談してください。
- 不眠が続くときはどうすればいいですか?
-
寝つけない・途中で目が覚める状態が数週間以上続く、日中の生活に支障が出る場合は、自己判断せず医療機関に相談しましょう。大きないびきや呼吸の止まりがある場合も受診の目安です。
- レム睡眠・ノンレム睡眠とは何ですか?
-
睡眠は、脳を休めるノンレム睡眠と、体を休め記憶の整理に関わるとされるレム睡眠が、約90分周期で繰り返されています。眠り始めに深いノンレム睡眠が多く、明け方に向けてレム睡眠が増えるとされます。前半に深く眠れると休養感が得られやすくなります。
- 寝室の温度は何度くらいがいいですか?
-
明確な最適値はありませんが、冬は室温18℃以上が一つの目安(WHO推奨)とされ、夏はエアコンで暑さを避けることが大切です。暑すぎ・寒すぎを避け、寝床内を快適に保つことで、途中で目が覚めにくくなります。
まとめ|今日からできる工夫を積み重ねよう
睡眠の質を上げる近道は、特別なことより毎日の習慣の積み重ねです。①朝に光を浴びてリズムを整える ②就寝前のカフェイン・スマホを控える ③就寝90分前に入浴する ④寝室環境を整える——まずは取り組みやすい1つから始めてみてください。工夫しても不眠が続く・日中に支障が出るときは、無理をせず医療機関に相談することが大切です。
参考文献・出典
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023(睡眠対策)」
- 厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023(本編)」(PDF)
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「厚生労働省 健康日本21アクション支援システム(旧 e-ヘルスネット)」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「厚生労働省 健康日本21アクション支援システム(旧 e-ヘルスネット)」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「厚生労働省 健康日本21アクション支援システム(旧 e-ヘルスネット)」
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「厚生労働省 健康日本21アクション支援システム(旧 e-ヘルスネット)」
- 国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「「健康食品」の安全性・有効性情報」
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運営:一般社団法人中小企業集客支援機構 | 最終更新:2026年7月


