「お客様の声をサイトに載せたくてインタビューをお願いしたのに、返ってくるのは『満足しています』『いいと思いますよ』ばかり。原稿にしてみると、どの会社のお客様の声とも入れ替え可能な、当たり障りのない文章になってしまった」——事例記事やお客様インタビューに取り組んだ中小企業の担当者から、こうした悩みをよく耳にします。せっかくお客様の貴重な時間をいただいたのに、読み手の心を動かす言葉が1つも取れなかったとしたら、もったいない話です。
結論からお伝えすると、薄い回答しか出ないのは相手のせいではなく、質問設計のせいです。「いかがですか?」という抽象的な質問には抽象的な答えしか返ってきません。逆に、具体化・時系列・比較・感情・数字という5つの深掘り技術を質問に組み込めば、話すのが苦手なお客様からでも、読み手が「これはうちの話だ」と感じる生々しい言葉を引き出しやすくなります。本記事では、導入前・検討中・導入後の3フェーズ別質問リストと、「満足です」を深掘る追い質問の型まで、そのまま使える形で解説します。
- お客様インタビューで当たり障りのない回答しか出ない3つの原因
- 深掘りの5つの技術(具体化・時系列・比較・感情・数字)の使い方
- 導入前・検討中・導入後のフェーズ別にそのまま使える質問リスト
- 「満足です」で止まった会話を深める追い質問の型7選
- 録音・許諾・場づくりなど、当日の進行と実務のチェックポイント
なぜ「満足です」で終わるのか?薄い回答が返る3つの原因
深掘りの技術に入る前に、まず「なぜ薄い回答になるのか」を押さえておきましょう。原因がわかれば対策は難しくありません。多くの場合、原因は次の3つに集約されます。
原因1:質問が抽象的すぎる
「弊社のサービスはいかがですか?」「使ってみてどうでしたか?」——この聞き方は、相手に「答えの範囲」を丸投げしています。何について、どの期間の、どの場面の話をすればいいのかが示されていないため、相手は無難な総評でしか答えられません。総評とはつまり「満足です」です。質問が抽象的なら回答も抽象的になる、というのは因果関係としてほぼ必然といえます。
原因2:クローズドクエスチョンで会話が閉じる
「効果はありましたか?」「使いやすかったですか?」のように、はい/いいえで答えられる質問(クローズドクエスチョン)を重ねると、会話は一問一答のアンケートのようになります。相手は「はい、ありました」と答えた時点で回答を完了したと感じるため、その先のエピソードが出てきません。クローズドクエスチョンは事実確認には有効ですが、エピソードを引き出す場面では「何が」「どのように」「なぜ」で始まるオープンクエスチョンが基本です。
原因3:相手が「正解」を探してしまっている
インタビューされる側は、多くの場合「相手の会社が喜ぶことを言ってあげたい」という気遣いのモードに入っています。悪気なく模範解答を探し、結果として広告コピーのような一般論を口にしてしまうのです。この状態を解くには、冒頭で「うまく話す必要はまったくありません」「困った点や不満も含めて、ありのままを聞かせていただくほうが記事の信頼性が上がります」と明示的に伝えることが有効です。正解探しをやめてもらう一言が、深いインタビューの入口になります。
当機構にも「インタビュー記事を作ったが、どの事例も同じような文章になってしまう」という相談が多く寄せられます。原稿を拝見すると、ほぼ例外なく質問票がこの3つの原因を抱えています。逆に質問設計を直すだけで、同じお客様から見違えるほど具体的な話が出てくるケースは珍しくありません。
深掘りの5つの技術——具体化・時系列・比較・感情・数字
薄い回答を深い回答に変える技術は、突き詰めると5つに整理できます。どれも「相手の頭の中にある体験の記憶」に照準を合わせるための道具です。まず全体像を表で確認しましょう。
| 技術 | 聞き方の例 | 引き出せるもの |
|---|---|---|
| 具体化 | 「たとえば直近で、それを実感した場面はありましたか?」 | 読み手が追体験できる具体的なエピソード |
| 時系列 | 「導入を決める前は、その業務をどう回していましたか?」 | ビフォー→アフターの変化のストーリー |
| 比較 | 「他社サービスや以前のやり方と比べて、何が一番違いましたか?」 | 選ばれた理由・差別化ポイント |
| 感情 | 「そのとき、正直どんな気持ちでしたか?」 | 共感を生む本音・不安・驚き |
| 数字 | 「時間や件数でいうと、どのくらい変わりましたか?」 | 説得力の核になる定量的な成果 |
具体化は5つの中でも最重要です。「便利になりました」と言われたら「たとえば昨日や先週、便利さを実感した瞬間はありましたか?」と場面を1つに絞ってもらいます。人間の記憶は場面単位で保存されているため、場面を指定した途端にディテールが一気にあふれ出す傾向があります。
時系列は、ストーリーの骨格を作る技術です。導入前の困りごと→検討のきっかけ→導入の決め手→導入後の変化、という時間軸に沿って聞くと、回答が自然と「物語」の形になります。事例記事の構成がそのままインタビューの流れになるため、原稿化も楽になります。比較は「なぜ他社ではなく自社が選ばれたのか」を言語化してもらう質問で、営業資料に転用できる貴重な素材です。
感情の質問は遠慮しがちですが、実は相手も話したがっていることが多い領域です。「最初は正直、半信半疑でした」という一言が入るだけで、事例の信頼性は大きく変わります。そして数字。「かなり楽になった」を「月20時間くらい減った」に変換できれば(例:残業時間の記録などで確認できる場合)、読み手への説得力は段違いです。数字が出ない場合も「感覚で構いませんが、半分くらい?3割くらい?」と選択肢を示すと答えやすくなります。ただし、相手の発言以上の数字を盛るのは厳禁です。掲載前に必ず本人確認を取りましょう。
そのまま使える質問リスト【導入前・検討中・導入後】
ここからは、5つの技術を組み込んだフェーズ別の質問リストです。すべてを聞く必要はありません。1回のインタビュー(60〜90分目安)なら、この中から10〜15問を選び、残りは会話の流れで拾うのが現実的です。
導入前(課題・困りごとを聞く)
| 質問 | ねらい(使う技術) |
|---|---|
| 導入前、その業務は誰がどんな手順で回していましたか? | 具体化:業務の実態を場面で描写してもらう |
| 一番大変だったのは、具体的にどんな場面でしたか? | 具体化:ビフォーの象徴的エピソード |
| その状態は、時間やコストでいうとどのくらいの負担でしたか? | 数字:ビフォーの定量化 |
| 当時、社内ではどんな声が出ていましたか? | 感情:現場の空気感 |
| 「なんとかしないと」と思ったきっかけは何でしたか? | 時系列:検討開始のトリガー |
検討中(比較・不安・決め手を聞く)
| 質問 | ねらい(使う技術) |
|---|---|
| 他にどんな選択肢(他社・内製・現状維持)を比べましたか? | 比較:検討の土俵を明らかにする |
| 比較するとき、何を一番重視しましたか? | 比較:選定基準の言語化 |
| 導入前に不安だったこと、引っかかったことはありましたか? | 感情:見込み客と同じ不安を代弁してもらう |
| 最終的に決め手になったのは何でしたか? | 比較+時系列:意思決定の瞬間 |
| 社内を説得するとき、どんな説明をしましたか? | 具体化:稟議・説得の実話 |
導入後(変化・成果・本音を聞く)
| 質問 | ねらい(使う技術) |
|---|---|
| 導入後、最初に「変わった」と感じたのはいつ、どんな場面でしたか? | 具体化+時系列:アフターの初体験 |
| 数字でいうと、何がどのくらい変わりましたか? | 数字:成果の定量化 |
| 導入前の不安は、実際にはどうなりましたか? | 感情+時系列:不安の回収 |
| 逆に「ここは期待と違った」「改善してほしい」点はありますか? | 感情:信頼性を高める本音 |
| どんな会社・担当者になら、このサービスを勧めますか? | 比較:推奨の条件=ターゲットの言語化 |
「改善してほしい点」をあえて聞くのは、記事の信頼性のためです。良いことしか書かれていない事例は読み手に警戒されやすく、小さな不満と、それをどう受け止めているかが1行あるだけで、記事全体の説得力が上がる傾向があります。掲載可否は後で相手と相談すればよいので、取材の場では遠慮なく聞きましょう。
「満足です」を深掘る追い質問の型7選
質問リストを用意しても、当日は「満足です」「特にないですね」といった短い回答が必ず出ます。ここで諦めて次の質問に移るか、追い質問で一段掘るかが、インタビューの質を分けます。深掘りは事前準備ではなくその場の反射神経なので、型として覚えておくのが有効です。
| 型 | 追い質問の例 | 使う場面 |
|---|---|---|
| 場面指定 | 「たとえば直近で、それを感じたのはいつですか?」 | 総評で終わったとき |
| オウム返し+沈黙 | 「満足、ですか」(と繰り返して待つ) | 言葉が続きそうな気配があるとき |
| 仮定はずし | 「もし導入していなかったら、今どうなっていたと思いますか?」 | 変化を実感として語ってもらうとき |
| 第三者視点 | 「現場の皆さんは何とおっしゃっていますか?」 | 本人が謙遜して語らないとき |
| 数字変換 | 「感覚で構いません、半分くらい?3割くらい?」 | 「かなり」「だいぶ」が出たとき |
| 一番ルール | 「その中で一番大きかったのはどれですか?」 | 回答が羅列で浅く広がったとき |
| 理由の往復 | 「それはなぜですか?」「というと?」 | 結論だけ言われて根拠がないとき |
特に効くのは「仮定はずし」です。「満足しています」→「もし導入していなかったら?」→「今も毎月末に徹夜で集計していたと思うと、ぞっとしますね」——このように、仮定の質問は相手をビフォーの記憶に引き戻し、変化の大きさを本人の言葉で語ってもらえることが多いのです。また「オウム返し+沈黙」は質問ですらありませんが、人は沈黙を埋めようとして続きを話す傾向があるため、慣れると強力な道具になります。3秒の沈黙を怖がらないことが、聞き手の技術の1つです。
インタビュー当日の進め方——6つのステップ
質問と深掘りの型が揃ったら、あとは当日の進行です。次の6ステップで進めると、初めてでも大きく外しにくくなります。
記事の目的・掲載先・所要時間を伝え、録音の許可を口頭で取り、録音開始後にもう一度「録音の許可をいただいています」と記録に残します。「うまく話す必要はない」「不満も歓迎」「掲載前に必ず原稿確認をお願いする」の3点をここで伝えると、正解探しモードを解除できます。
「御社の事業と、〇〇様の役割を教えてください」から始めます。相手が一番話しやすい自己紹介で口を温めつつ、記事の冒頭に必要な会社紹介の素材も同時に確保できます。
導入前パートの質問リストで、当時の業務の実態と困りごとを場面ベースで聞きます。ここが薄いと記事全体が薄くなるため、時間をかけてよいパートです。
比較した選択肢、不安、決め手、社内説得の実話を聞きます。見込み客が今まさに悩んでいるポイントと重なるため、営業にも転用できる素材が取れます。
変化を実感した場面、数字での変化、不安の回収、改善要望まで踏み込みます。追い質問の型が最も活躍するパートです。
「どんな会社に勧めたいか」「言い残したことはないか」を聞いて締めます。最後の「他に何かありますか?」で意外な本音が出ることも多いので、時間ギリギリまで質問を詰め込まず、余白を残しておきましょう。
話しやすい場づくりと、記録・許諾の実務
話しやすい場をつくる4つの工夫
- 人数は最小限に:こちら側が3人も4人も並ぶと相手は萎縮しがちです。聞き手1人+記録係1人までが目安です。
- 質問票は事前共有する:主要な質問を前日までに送っておくと、相手は数字や当時の記録を準備でき、回答の具体性が上がります。当日は質問票を読み上げるのではなく、会話の地図として使います。
- 相槌と要約で「聞いている」を伝える:「つまり月末の3日間が一番苦しかったんですね」と要約を返すと、相手は安心して次を話せます。
- メモに没頭しない:録音があるなら、当日はキーワードだけメモして相手の顔を見て聞くほうが、話は深くなりやすいです。
記録と許諾のチェックリスト
インタビュー内容は相手企業の情報資産です。トラブルを避けるため、記録と許諾は口約束にせず、簡単でよいので書面(メールで可)に残しましょう。
- 録音・撮影の可否(録音データの保管期間と用途も伝える)
- 社名・氏名・役職・顔写真の掲載可否(匿名希望の場合の表記方法)
- 数字・固有名詞の掲載範囲(取引先名や金額はぼかすことが多い)
- 公開前の原稿確認フローと修正権(相手の校正を経てから公開する)
- 二次利用の範囲(Web記事のほか、営業資料・SNS・広告への転用可否)
- 掲載後の取り下げ依頼への対応方針
特に二次利用の範囲は忘れやすいポイントです。後から営業資料に使いたくなって改めて許諾を取り直すのは双方の手間になるため、最初の許諾時に「営業資料・SNS等でも引用させていただく場合があります」まで含めて合意しておくのがおすすめです。
シミュレーション:質問設計で「使える引用」はどれだけ変わるか
最後に、質問設計の効果を数字のイメージで確認しましょう。以下は当機構が支援時に用いる考え方を単純化した試算例(例:60分のインタビューを想定)です。
60分
インタビュー時間
12問
準備する質問数
8〜10箇所
記事で使える引用
4チャネル
成果物の活用先
抽象的な質問だけで進めた60分のインタビューでは、体感として「記事にそのまま使える具体的な引用」は2〜3箇所しか取れないことが珍しくありません。一方、フェーズ別質問12問+追い質問の型を使った場合、同じ60分で8〜10箇所の引用が狙えます。同じ取材時間でも、質問設計次第で素材の量は3倍前後変わり得る計算です。
さらに、取れた素材はWebの事例記事1本で終わりません。(1)事例記事、(2)営業資料の「お客様の声」スライド、(3)SNS投稿用の引用カード、(4)広告・LPの推薦文——と、1回のインタビューから最低4チャネルに展開できます。仮に外部ライターに1記事5万円で制作を依頼している場合、素材が3倍取れて4チャネルに使い回せるなら、1引用あたりの実質コストは大きく下がる計算になります。インタビューの質問設計は、コンテンツ制作の投資対効果を左右する上流工程なのです。
よくある質問(FAQ)
- インタビューの所要時間はどのくらいが適切ですか?
-
60〜90分が目安です。60分未満だと導入前の課題パートが浅くなりがちで、90分を超えると相手の集中力が落ちる傾向があります。忙しい相手には「45分の短縮版+後日メールで数字だけ補足確認」という分割方式も有効です。
- 口下手なお客様からも深い話は引き出せますか?
-
引き出しやすくなります。口下手な方ほど抽象的な質問に弱く、場面を指定した具体的な質問に強い傾向があります。「昨日の業務でこのツールを開いたのはいつですか?」のように場面を細かく区切って聞き、沈黙を急かさないことがポイントです。
- 質問リストは事前に相手へ送るべきですか?
-
主要な質問は送ることをおすすめします。特に数字(導入前後の工数・件数など)は当日その場では思い出せないことが多く、事前共有しておくと調べてきてもらえます。ただし当日は台本の読み合わせにせず、回答に応じて追い質問で掘るのが原則です。
- ネガティブな回答が出た場合、記事にはどう扱えばいいですか?
-
可能な範囲で載せることを検討しましょう。「最初は操作に戸惑ったが、2週間で慣れた」のように、小さな不満とその解消をセットで書くと記事の信頼性が上がる傾向があります。掲載可否は原稿確認の段階で相手と相談し、無断掲載は避けてください。
- 録音の文字起こしや原稿化はどう進めるのが効率的ですか?
-
録音→自動文字起こしツールで全文化→「使える引用」に印を付ける→時系列(課題→検討→導入→成果)の構成に並べ替える、という手順が効率的です。原稿は発言の趣旨を変えない範囲で整え、必ず本人の校正を経てから公開します。
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まとめ:質問の設計図が、お客様の声の質を決める
お客様インタビューで「満足です」しか出てこないのは、相手の話し下手ではなく質問の設計不足が原因であることがほとんどです。抽象的な質問とクローズドクエスチョンをやめ、具体化・時系列・比較・感情・数字の5つの技術で質問を組み立てる。導入前・検討中・導入後のフェーズ別リストを地図にして、当日は追い質問の型で一段ずつ掘る。そして録音・許諾・原稿確認の実務を丁寧に踏む——この流れを一度作ってしまえば、インタビューのたびに再利用でき、事例コンテンツの質は安定して上がっていきます。1回の取材から4チャネルに展開できる「深い声」を、次のインタビューから狙ってみてください。
「質問リストを自社向けに作り込みたい」「インタビューはできたが、記事としての構成に自信がない」という場合は、当機構が事例コンテンツの設計から原稿化までを一緒に整理します。まずはお気軽にご相談ください。
一般社団法人 中小企業集客支援機構(本部:大阪市都島区)
「埋もれた価値を、社会の力へ」を理念に、中小企業・スタートアップのマーケティングを支援する非営利団体です。広告運用(Google/Meta/LINE)、SEO・コンテンツマーケティング、クラウドファンディング支援、EC・D2C支援を主な領域とし、全国の事業者の集客を伴走支援しています。
本記事は、当機構に寄せられる相談事例と支援現場での知見をもとに構成しています。制度・各社サービスの仕様は変更される場合があるため、最新情報は各公式サイトをご確認ください。

