「自社サイトを作ったのに、問い合わせがほとんど来ない」「アクセスはそこそこあるのに、すぐに離脱されてしまう」——そんな悩みを抱える中小企業の経営者・マーケティング担当者は少なくありません。原因はデザインや広告費の不足だと思われがちですが、実際にサイトを拝見すると、文章が専門用語だらけで、読み手にまったく伝わっていないことが離脱の大きな要因になっているケースが目立ちます。書き手にとっての「当たり前の言葉」が、読み手にとっては外国語のように響いているのです。
結論からお伝えすると、サイトの文章は「中学生に伝わる言葉」まで言い換えるだけで、読まれ方・問い合わせのされ方が大きく変わり得ます。特別なデザイン変更も広告費も要りません。本記事では、専門用語が離脱を生む理由(知識の呪い)から、言い換えの具体的な手順、建設・士業・IT・医療周辺・製造の業種別NG→OK言い換え表、専門性を落とさずに平易にするコツ、言い換えを定着させる社内チェックの仕組みまでを、実務でそのまま使える形で解説します。
- 専門用語がサイト離脱を生むメカニズム(知識の呪い)
- 「中学生に伝わる」が言い換えの基準になる理由
- 専門用語を言い換える5つの手順(用語の洗い出し〜言い換え辞書化)
- 建設・士業・IT・医療周辺・製造の業種別NG→OK言い換え表
- 専門性を落とさずに平易にする5つのコツ
- 言い換えで問い合わせ数がどう変わり得るかの試算と、社内チェックの仕組み
なぜ専門用語だらけのサイトは顧客を失うのか?
最初に結論です。専門用語だらけのサイトが顧客を失うのは、読み手が「わからない」と感じた瞬間に、問い合わせる前に黙ってページを閉じてしまうからです。読み手は「この用語の意味を教えてください」とは聞いてくれません。わからない文章に出会ったとき、人は質問するのではなく、わかる言葉で書かれた別の会社のサイトへ移動します。つまり専門用語は、気づかないうちに競合へ顧客を送り届ける装置になり得るのです。
「知識の呪い」——書き手は読み手の無知を想像できない
この現象の背景には、行動経済学などで「知識の呪い(Curse of Knowledge)」と呼ばれる心理があります。人は一度知識を身につけると、「その知識を知らなかった頃の自分」を思い出せなくなるという傾向です。建設会社の社長にとって「躯体」「養生」は日常語ですし、税理士にとって「顧問契約」「決算申告」は説明不要の言葉です。しかし発注者である読み手は、その業界の外にいる人です。書き手が「これくらい常識だろう」と感じる言葉ほど、読み手には届いていない——このズレが、専門用語サイトの根本的な問題です。
読み手は「専門家」ではなく「困りごとを抱えた素人」
もう一つ押さえたいのは、BtoBであってもサイトの読み手は多くの場合その分野の素人だという点です。例えば製造業のサイトを見るのは同業の技術者ではなく、初めて金属加工を外注する食品メーカーの総務担当かもしれません。士業のサイトを見るのは、初めて相続に直面した会社員かもしれません。読み手は「歩留まり」や「遺留分」で検索するのではなく、「不良品を減らしたい」「相続 もめない方法」といった、自分の困りごとの言葉で探しています。専門用語で書かれたサイトは、この検索行動ともすれ違いやすくなります。
専門用語による離脱は、クレームのように目に見える形では表れません。「なんとなく問い合わせが少ない」「直帰率が高い」という数字の裏で静かに進行します。アクセス解析で直帰率や滞在時間が悪いページは、まず文章のわかりやすさを疑ってみる価値があります。
なぜ「中学生に伝わる」が言い換えの基準になるのか?
言い換えの基準としてよく使われるのが「中学生に伝わるか」です。これは読み手を子ども扱いするという意味ではありません。中学生レベルの語彙とは、義務教育を通じて日本中のほぼ全員が共有している言葉の範囲のことです。新聞やテレビのニュース原稿も、おおむねこの水準を意識して書かれていると言われます。つまり「中学生に伝わる文章」とは、業界・年齢・職種を問わず、誰が読んでも誤解なく伝わる文章の実用的な目安なのです。
逆に言えば、高校以降の専門教育や実務経験で身につけた言葉は、読み手が共有している保証がありません。「この言葉は中学の教科書に出てくるだろうか?」と自問するだけで、言い換えるべき用語をかなり正確に選別できます。判断に迷ったら、書き手の前提と読み手の実態を並べて比べてみてください。
書き手の前提
業界歴10年以上/専門用語は日常語/説明を省いても通じる社内環境
読み手の実態
その業界は初めて/困りごとの言葉で検索/わからなければ3秒で離脱もあり得る
この2つのギャップを埋める作業が「言い換え」です。次章から、具体的な手順に入ります。
専門用語を言い換える5つの手順
言い換えは、思いつきで一語ずつ直すのではなく、手順化して進めると抜け漏れが減り、社内にノウハウとして残ります。次の5ステップで進めるのがおすすめです。
トップページ・サービス紹介・料金など、問い合わせに直結する主要5ページ程度を対象に、専門用語をリストアップします。基準は「中学の教科書に出てこない言葉」。自分では気づきにくいため、業界外の人に読んでもらい、意味を説明できなかった言葉に印をつけてもらう方法が有効です。
言い換えの正解は辞書ではなく顧客の口の中にあります。問い合わせメール、商談メモ、電話での質問、検索キーワードなどから、顧客が悩みをどんな言葉で表現しているかを集めます。「サイトの引っ越しってできますか?」と聞かれているなら、その言葉こそ載せるべき表現です。
用語ごとに「説明型(かみ砕いて説明する)」「比喩型(身近なものに例える)」「併記型(専門用語+カッコで補足)」の3パターンを作ります。例えばSSL化なら、説明型「通信を暗号化して情報を守る仕組み」、比喩型「サイトと訪問者の間に鍵付きの封筒を使うイメージ」、併記型「SSL化(通信を暗号化して守る設定)」です。文脈に応じて使い分けます。
言い換えた文章を業界外の人に読んでもらい、「何のサービスか」「誰向けか」「頼むと何をしてくれるのか」を自分の言葉で説明してもらいます。3つとも言えれば合格。詰まった箇所が、専門用語が残っているか説明の足りない箇所です。
確定した言い換えは、スプレッドシートなどに「専門用語/言い換え/使用場面」の3列で蓄積します。これが自社の「言い換え辞書」になり、次のページ制作やチラシ・提案書にも再利用できます。新しい用語が出るたびに追記して育てます。
【業種別】専門用語のNG→OK言い換え表
ここからは、当機構への相談が多い5つの業種について、サイトでよく見かける専門用語の言い換え例を表にまとめます。そのまま使うのではなく、自社の顧客が実際に使っている言葉に寄せて調整するのがポイントです。
建設・リフォーム業の言い換え例
| NG(専門用語) | OK(言い換え例) | 補足 |
|---|---|---|
| 躯体 | 建物の骨組み | 「躯体工事」→「骨組みをつくる工事」 |
| 養生 | 傷や汚れを防ぐための保護作業 | 読み手は「療養」を連想しがち |
| 外構 | 庭・駐車場・塀など建物まわり | 「エクステリア」も併記で補足 |
| 施工 | 工事 | 「施工実績」→「工事の実例」 |
士業(税理士・社労士・行政書士など)の言い換え例
| NG(専門用語) | OK(言い換え例) | 補足 |
|---|---|---|
| 顧問契約 | 毎月いつでも相談できる契約 | 頻度と範囲を具体的に示す |
| 遺留分 | 相続で最低限受け取れる取り分 | 法律用語は原則すべて補足する |
| 就業規則 | 会社の働き方のルールブック | 「作る義務があるか」も一言添える |
| 登記 | 法務局への正式な登録手続き | 「何のために必要か」とセットで |
IT・Web業の言い換え例
| NG(専門用語) | OK(言い換え例) | 補足 |
|---|---|---|
| サーバー移管 | サイトの引っ越し | 顧客の質問文がそのまま使える好例 |
| レスポンシブ対応 | スマホでも見やすい表示に対応 | 効果(見やすさ)で言い換える |
| SSL化 | 通信を暗号化して情報を守る設定 | 「鍵マークが付く」と補足も有効 |
| CMS | 専門知識なしで自分で更新できる仕組み | 略語は原則使わない |
医療周辺サービス(整体・治療院など)の言い換え例
| NG(専門用語) | OK(言い換え例) | 補足 |
|---|---|---|
| 頸椎 | 首の骨 | 体の部位は日常語に置き換える |
| 僧帽筋 | 首から肩・背中にかけての筋肉 | 筋肉名は位置の説明に変換 |
| 可動域 | 関節が動かせる範囲 | 「腕がここまで上がる」等の例示も |
整体・治療院などの分野では、言い換え以前に「治る」「改善する」といった効果の断定表現が広告規制(医療広告ガイドラインや景品表示法など)に触れるおそれがあります。平易にする作業と併せて、効果を断定しない表現になっているかも確認してください。
製造業の言い換え例
| NG(専門用語) | OK(言い換え例) | 補足 |
|---|---|---|
| 公差 | 許される寸法の誤差の範囲 | 「±0.01mmまで対応」等の数字は残す |
| 歩留まり | 作った中で合格品になる割合 | 品質アピールの文脈で言い換える |
| 切削加工 | 金属を削って形をつくる加工 | 加工法は「何をどうするか」で説明 |
| 多品種少量 | いろいろな製品を少しずつ | 「1個からでも」等の具体化が有効 |
専門性を落とさずに平易にする5つのコツ
「やさしく書くと、素人っぽく見えて専門性が疑われるのでは」という心配をよく耳にします。しかし実際は逆で、難しいことをやさしく説明できることこそ、深い理解の証明として受け取られる傾向があります。専門性を保ったまま平易にするには、次の5つのコツが役立ちます。
コツ1:全部は言い換えず「併記」で両取りする
専門用語をゼロにする必要はありません。「SSL化(通信を暗号化して守る設定)」のように、専門用語+カッコ書きの補足という併記型を使えば、専門家らしさと分かりやすさを両立できます。特にその用語で検索されるキーワード(例:「就業規則 作成」)は、SEOの観点からも本文と見出しに残すべきです。
コツ2:数字と固有名詞は削らない
平易にする対象は「言葉」であって「情報の精度」ではありません。「±0.01mmの精度」「創業35年」「対応実績◯件」といった数字や固有名詞は、専門性と信頼の根拠そのものなので残します。削るのは意味の通じない用語、残すのは検証できる事実——この線引きを守れば、やさしい文章でも軽くなりません。
コツ3:比喩は「顧客の日常」から借りる
比喩は強力ですが、業界内の例えでは意味がありません。読み手の日常にあるものから借ります。「サーバーはサイトの土地、ドメインは住所」「就業規則は会社のルールブック」のように、読み手が一度も調べずにイメージできる例えを選びます。商談で顧客が「ああ、◯◯みたいなものですね」と言った表現は、そのまま使える一級品の比喩です。
コツ4:一文を短くし、結論を先に書く
用語を言い換えても、一文が長ければ伝わりません。目安は一文60字以内・一文一義(1つの文に1つの内容)。さらに段落の先頭に結論を置き、理由と具体例を後ろに続けます。この構成は検索エンジンや生成AIにも要約・引用されやすく、AIO(AI検索最適化)の観点でも有利に働き得ます。
コツ5:読み手別にページを分ける
同業者・技術者向けの詳細情報が必要な場合は、無理に1ページへ詰め込まず、「初めての方向けページ(平易)」と「技術仕様ページ(専門)」を分けます。入口は中学生に伝わる言葉で書き、深い情報は次の階層に用意する。この二段構えなら、専門性の証明と入口の分かりやすさが両立します。
言い換えで問い合わせはどれくらい変わり得るか?【シミュレーション】
言い換えの効果を、数字で試算してみましょう。以下はあくまで仮定を置いた例ですが、「文章改善が売上にどう波及するか」の構造をつかむのに役立ちます。
月間問い合わせ数 = 月間アクセス数 ×(1 − 直帰率)× 問い合わせ率(CVR)。言い換えは「直帰率の低下」と「CVRの上昇」の2か所に効き得ます。
| 項目 | 改善前(例) | 改善後の仮定(例) |
|---|---|---|
| 月間アクセス数 | 3,000件 | 3,000件(変えない) |
| 直帰率 | 80% | 70% |
| 読了後の問い合わせ率 | 2.5% | 3.5% |
| 月間問い合わせ数 | 15件 | 31件 |
3,000件
月間アクセス(例)
80→70%
直帰率の仮定
2.5→3.5%
問い合わせ率の仮定
15→31件
月間問い合わせ試算
この例では、アクセス数を1件も増やさずに、問い合わせが月15件から31件へと約2倍になる計算です。実際の数値はサイトや業種によって異なりますが、広告費ゼロで着手でき、効いた場合の波及が大きいのが文章改善の特徴です。まずは直帰率の高い主要ページ1〜2本から試し、改善前後の数値を比較して検証するとよいでしょう。
言い換えを定着させる社内チェックの仕組み
言い換えは一度やって終わりではありません。新しいページやブログ記事を作るたびに専門用語は再び混入します。属人的な「気をつける」ではなく、仕組みとしてチェックが回る状態を作ることが定着の鍵です。
当機構にも「サービス内容には自信があるのに問い合わせが来ない」というご相談が多く寄せられます。サイトを拝見すると、最初の画面から専門用語が並んでいるケースが目立ちます。ご本人は気づいていないことがほとんどで、だからこそ第三者チェックを仕組みに組み込むことをおすすめしています。
公開前チェックリスト
- 中学の教科書に出てこない用語に、説明・補足・言い換えが付いているか
- 略語(CMS・DX・BPOなど)を説明なしで使っていないか
- 最初の画面(ファーストビュー)の文章だけで「誰向けの何のサービスか」が伝わるか
- 一文60字以内・一文一義になっているか
- 業界外の人が読んで、サービス内容を自分の言葉で説明できたか(中学生テスト)
- 数字・実績・固有名詞など専門性の根拠は削られていないか
運用ルールは「辞書・テスト・当番」の3点セット
仕組み化の中身はシンプルで構いません。第一に、「言い換え辞書」を共有フォルダに置き、書く人全員が参照・追記できるようにします。第二に、公開前の「中学生テスト」を必須工程にし、読んでもらう相手を決めておきます。第三に、四半期に一度の「用語パトロール当番」を決め、既存ページへの専門用語の混入を巡回します。この3点セットが回り始めると、提案書や営業トークまで社内の言葉全体が顧客目線に揃っていく効果も期待できます。
よくある質問(FAQ)
- 専門用語を言い換えると、専門性が低く見えませんか?
-
逆であるケースが多いです。難しい内容をやさしく説明できることは深い理解の証明として受け取られる傾向があります。数字・実績・固有名詞といった専門性の根拠を残したまま、意味の通じない用語だけを言い換えれば、分かりやすさと専門性は両立できます。
- どこまで言い換えればよいか、基準はありますか?
-
実用的な基準は「中学の教科書に出てくる言葉か」です。出てこない言葉には説明・比喩・併記のいずれかを付けます。最終確認として、業界外の人に読んでもらい、サービス内容を自分の言葉で説明できるかを試す「中学生テスト」をおすすめします。
- SEOで狙っているキーワードが専門用語の場合はどうすればよいですか?
-
検索されている用語は削除せず、見出しや本文に残した上で「専門用語(やさしい補足)」の併記型を使います。あわせて、顧客が使う平易な言葉(例:「サイトの引っ越し」)も本文に含めると、検索の取りこぼしを減らせる可能性があります。
- 社内に文章が得意な人がいません。何から始めればよいですか?
-
文才は不要です。まず主要ページの専門用語の洗い出しと、問い合わせメールから「顧客の言葉」を集める作業から始めてください。この2つは事務作業に近く、誰でも着手できます。難しければ外部の支援機関に相談するのも一手です。
- 言い換えの効果はどうやって測ればよいですか?
-
改善前後の直帰率・平均滞在時間・問い合わせ数をアクセス解析で比較します。判断には前後それぞれ1か月程度のデータを見るのが目安です。商談時に「サイトが分かりやすかった」という声が増えたかも定性的な手がかりになります。
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まとめ:言葉を顧客に合わせることが、最も安い集客改善
専門用語だらけのサイトは、書き手が気づかないうちに顧客を静かに遠ざけます。原因は「知識の呪い」であり、悪意でも実力不足でもありません。だからこそ、用語の洗い出し→顧客の言葉の収集→3パターンの言い換え→中学生テスト→辞書化という手順と、公開前チェックの仕組みで対処するのが有効です。数字や実績を残したまま言葉だけを顧客に合わせれば、専門性を損なわずに伝わるサイトへ変えていけます。まずはトップページの最初の3行を「中学生に伝わるか」という目で読み直すことから始めてみてください。
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